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アクト・オブ・キリングのArxのレビュー・感想・評価

アクト・オブ・キリング(2012年製作の映画)
4.1
そこら辺の残酷映画の数倍グロテスクで途中からこっちまで吐きそうになってしまった。

インドネシアであった共産主義者の大虐殺をテーマに加害者側にその映画を撮らせた様子を記録したドキュメンタリー。

例えば単に大虐殺の映像が残っていたとしてそれを並べていく映画だとしたら、ひどいことがあったんだなとは思っても、それ以上の気持ちにはならないだろう。

ではなぜ見てて気持ち悪くなるぐらい不快になる映画になったのか。2つあると思う。

① 映画内映画(ややこしいな)では、映画で「演じる」という前提、つまり俳優はあくまで「役」であるということを破壊し、実際の加害者が殺害シーンを演じている。

② 虐殺を行なっていた民兵が街を練り歩き、国営放送で共産主義者を虐殺する映画を大々的に宣伝する一方、国営放送のスタッフによる冷めたコメントや選挙における汚職などのシーンによって現在のインドネシア社会における建前と本音を炙り出している。そしてそれは、映画内映画や主人公格の男にも同じ構造があり、だんだん現実社会と作り物の境界線が無くなってくる。
そう考えると、この映画のベストショットは何回か出てくる巨大魚のオブジェの横でダンサーが踊っているのを超引きのカメラで撮ったシーンかな。手前の画面の鮮やかさと奥の曇天の不吉さの対比。

しんどいのでもう1度見るかは分かりませんが凄い映画だとは思う。

ちなみに、本筋とはあまり関係ないけどこの映画で一番好きな発言→「議会とは本来神聖な場所であるべきだ。でもあそこにいる奴らはただのネクタイをつけた泥棒だ」
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