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そして泥船はゆくのlpのレビュー・感想・評価

そして泥船はゆく(2013年製作の映画)
4.1
渡辺紘文監督のデビュー作。本当は映画館で見たかったけど、なかなか上映の機会もなく、青山シアターでの配信も終わりそうということで、このタイミングで青山シアターから鑑賞。

渡辺監督はこの映画の後に『七日』『プールサイドマン』『地球はお祭り騒ぎ』という、とんでもない3本を産む訳だけど、後に続く「何気無い日常の繰り返し」は今作の時点で既に萌芽していた。
『七日』以降の主人公は必ず「仕事」に従事しており、その味も素っ気も無い暮らしに渡辺監督は着目した訳だけど、今作で監督が描いたのは無職の男。劇中の表現を借りるなら「怠惰」な男の日常が、後半までひたすら描かれる。
もちろん今作は劇映画なので、前半の時点でもドラマはあるけれど、非常に小さいスケールに収められている。ただし、停滞する田舎社会への嫌悪や、製作当時の「震災」を巡る社会の動きはしっかり盛り込んでいて、渡辺監督独特のスタンスは充分に堪能できる。

後の作品群に連なる渡辺監督の作家性が堪能できた点で満足ではあるけれど、今作最大のポイントはそこではなく、話が一気に加速する後半~終盤だろう。あの展開をどう解釈するかが、今作の評価の分かれ道。
ラストはメタファーがふんだんに盛り込まれ、解釈も何通りか可能な含みを持たせた内容で趣深い。個人的には「食事」「死への恐怖」「おばあちゃん」。3つのキーワードから考えて、ラストは「精神的な死」と解釈。

主人公が怠惰さの中に陰を抱えている点やラストの急転調など、渡辺監督の以後の作品群では『プールサイドマン』に近い映画でした。