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FORMAのlpのレビュー・感想・評価

FORMA(2013年製作の映画)
5.0
145分間に渡って不穏感と緊張が持続する傑作サスペンス。

東京国際映画祭を皮切りに、三大映画祭の1つであるベルリン国際映画祭、そして香港国際映画祭で高い評価を獲得した坂本あゆみ監督のデビュー作。

2014年の年間ベスト2位に選出した傑作サスペンスです。
高校の同級生2人が社会人になってから再会し、同じ会社で働き始めることになるが・・・という話。高校時代の憎しみを社会人になってから再び暴走させる、憎悪に取り憑かれた人間の姿を描き出しています。個人的には他人事に思えなかったり、身につまされる部分もあったりと、共感出来る部分は非常に大きかったです。またそれと同時に、今作のリアルな人間描写をより痛く感じ取る結果となりました。

作風はクライマックスに至るまで大きな事件は起こらないのだけれども、全編に渡って不穏感が漂い、時折極度な緊張が走るヒューマンサスペンスです。一見すると自然な会話からも滲み出ている不穏な空気と緊張感にどんどん惹き付けられ、145分の長さをほとんど感じさせない展開が見事でした。
今作の特徴の1つとして挙げられるのは、劇中の多くのシーンがロングショットで構成されていること。主人公2人の間に流れる空気と関係性を明確にする上で、ロングショットの多用は効果的だったように思います。最初は冗長的に感じるシーンもありはしましたが、終盤にはそこに物語的な意味合いを付加する「ある仕掛け」が炸裂してこれまた素晴らしい。
何れも新しい映画表現の可能性に挑みつつ、一方でエンターテイメントとして観客を飽きさせない配慮も感じられる工夫で、様々な映画祭で今作が高い評価を獲得したことにも納得がいきました。

キャストでは、主演を務めた松岡恵望子と梅野渚の2人がとにかく素晴らしい。
梅野渚の如何にも不協和音をもたらしそうな存在感も、その存在に振り回される松岡恵望子の掴み所の無さも非常にリアルでした。特に梅野渚は陽と陰のギャップが大きい役柄にも関わらず、現実味のあるキャラクターを成立させていて非常に上手かったです。
その他のキャストでは終始何処か歯切れの悪かった光石研の演技が、最後の最後に映画の余韻を生じさせるうえで効果的に機能していました。

公開から4年以上が経過した現在も、未だソフト化されていない映画なので観られる機会は少ないかと思いますが、オススメです!
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