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さよなら、アドルフのmaverickのレビュー・感想・評価

さよなら、アドルフ(2012年製作の映画)
3.7
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の新作映画『ブラック・ウィドウ』の監督に選ばれたケイト・ショートランドの代表作ということで鑑賞。終戦直後のドイツが舞台。父と母なしに、子供達だけで生きるために行動した姿を描いた話。14歳の姉を主人公に、歳の近い妹、まだ子供の双子の弟、産まれたばかりの弟とで構成されている。彼女らはドイツ人。父親はナチスの高官だ。戦争に敗れ、世界の敵と認識されたドイツの人間がどういう扱いを受けたか。また、戦争が幼い子供らにどういう悲劇を与えたかを残酷なまでに知らしめる。作品としては作りが粗く、映画としての完成度は高くはないかと。人をだいぶ選ぶと思う。ただ、戦争を描くという意味ではしっかりとその役割を果たしている。テーマははっきりしており、後半につれてそれははっきり感じることとなる。お涙頂戴の美しいドラマでなく、描写はとにかく容赦ない。戦争の生々しさを画面から痛烈に感じる。14歳の姉を中心とした子供達だけのグループが、戦争が終わって間もない戦地でどういうことに巻き込まれるか。生や死について、容赦なく描かれた話である。子供らしさが微笑ましい描写もあるが、『火垂るの墓』のように、子供だからこそ より残酷だと感じる作品性だ。また、少女がこの過酷な状況を通して大人へと変わってゆく様も描かれる。生々しい性の描写は過激ではあるが、それもまたリアルだ。彼女らを通して、現代に生きる我々が戦争に巻き込まれるとどうなるか。それを感じさせる。『さよならアドルフ』という邦題タイトルは作品には合ってはいないが、それをきっかけに観る人が一人でも多くいれば良いと思う。『ブラック・ウィドウ』公開の、このタイミングというのもきっかけになると思う。とにかく観てほしいと思う作品。この監督がMCU作品をどう料理するのか。楽しみだ。
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