たつなみ

ホドロフスキーのDUNEのたつなみのレビュー・感想・評価

ホドロフスキーのDUNE(2013年製作の映画)
2.5
リンチの『砂の惑星』を観てから鑑賞するととても面白い。
ホドロフスキーにここまで言わしめる『DUNE』という原作の偉大さと途方も無さを感じると共に、”映画監督“という存在について考えさせられる作品でもあった。

ハッキリ言って『DUNE』という原作小説の良さを全く知らない私にとって、『観る人の人生観を変えたい』とまで言ってしまう程の作品って何なの?と思う。
それ程までに衝撃的な原作だったのだろうと想像するが、既にSWを始めとするスペースオペラを知っている身としては『ふーん…』と思うしかない。

それはともかく、惚れ込んだ原作を自分なりに解釈し、映像化しようとしたホドロフスキーの情熱がウザいくらいに伝わってきた。

原作をイメージ通りに具現化出来る絵コンテ担当にメビウス、特殊効果にダン•オバノン、デザインにH.R.ギーガー(この人絵同様なかなかキモい)、キャストにサルバドール•ダリ、オーソン•ウェルズ、ミック•ジャガー…と、彼の思い描く通りに作品作りが進んで行く過程をワクワクしながら語るホドロフスキーじいちゃん。

でもプロデューサーが付いた”商業映画”を作る以上、それを観る観客の事も考えなければならない。
いかに素晴らしい原作の映画化だからと言って、10時間以上(!)もする映画を誰が観ると言うのか?
そして監督は作品を作る権利を持っているとは言え、無尽蔵に金を使って良い訳が無い。
なぜその辺りをちゃんと擦り合わせておかなかったのか?
ラスト近く、制作が頓挫した後に『カネなんてクソだ』的なことをホドロフスキーは語るが、正直あまりにも世間ズレした発言に思えて引いてしまった。

自分の思い通りの作品を作りたいなら自費を集めてインディーズで作ったらいい。
奇しくも理想だけでは生きて行けないことを強く実感した。

リンチが作った『砂の惑星』が余りにも酷い出来だったのを嬉しそうに語るホドロフスキーの笑顔が忘れられない。
「アーティスト」と呼ばれる人たちってこういう承認欲求の強い人ばっかりなんだろうな。