もっちゃん

トム・アット・ザ・ファームのもっちゃんのレビュー・感想・評価

3.8
ドランのサスペンス。もちろんドランだから単純なサスペンスは作らない。「ドラン映画的サスペンス」ではなく、「サスペンス的ドラン映画」を作ってしまうあたりが憎たらしいところ。

この映画に登場する人物は総じて孤独である。皆相容れない部分を持ちながら、「孤独」という部分ではつながっているという矛盾。だが、互いに寛容であったり、理解することができないという虚しさを伝えたかったのだと思う。

それはゲイであると公言するドラン自身が常々感じているものであり、テーマとしていることであるだろう。息子のことを理解しようとして空回りする母(『Mommy』)、死んだ息子のことでいっぱいいっぱいの母も結局は「孤独」で「不寛容」である。

そして今作の粗暴な兄も主人公トムも孤独である。孤独であるがゆえに寄り添い、離れるのが怖いがゆえに自らのルールに縛ろうとする。そしてお互いに理解できず離れていく。この哀しき矛盾が美しい描写の中に隠されている。

もちろんサスペンスということで作中に散りばめられた恐怖の断片が一定の緊張感を担保している。シャワー室での表情のない顔(「シャワー」と「サスペンス」と言えばヒッチコック『サイコ』を思わせる)なんかは古典的な手法だが、これは兄の異常性というよりもむしろトムの孤独を象徴するように思う。
さらには音楽もスリラーテイストを採用している。そしてラストのシーンで恐怖がピークに達するように計算されている。ただ何度も言うようにこれは単なるサスペンスではなく、「サスペンス的な」ドラン映画であるということを重ねて言っておかなければならない。