25歳にしてカンヌ映画祭の審査員に任命された天才ドラン様の作品。しかも任命される以前にサクッと作った作品。
信じられへんくらい素晴らしい。ドラン監督のこの雰囲気がほんまに好き。タランティーノ様の世界観に次いで好き。ずっと浸っときたい。
そして安定の監督自身が主演ですが、自分のイケメンさ、中性的な感じ、ほんでそれが自分の描く世界観に超絶マッチすることを分かってるのがにくい。つまり、客観的に自分をキャスティングしてるレベル。
ゲイであるトムのパートナー「ギョーム」が亡くなって、その葬式にギョームの実家のド田舎に訪れる。ただこれだけの話を、官能的でサイコでスリリングに仕上げてくるドラン様。嫉妬を通り越して、ほんまに映画つくってくれてありがとうございます。
ドラン監督の「マミー」でも使われてた、アスペクト比が変わる演出。マミーでは2回あって、それぞれに意図が違うくて驚いたけど、本作でも全くまた意図が違ってて驚き。同じ演出でも、しかもアスペクト比かえるってだけで、こんなにいろんな意味合い出せるんか。。。天才。
ギョームの実家では、兄のフランシスと母が2人暮らし。この家族は田舎の小さなコミュニティーの中で避けられて孤立している。ギョームのせいでこの家族は町から出られない異様な状況。母のために、弟ギョームがゲイだったことを内緒にしている兄フランシス。そこに現れたトムは、兄からすれば厄介者。弟の秘密をバラさないように暴力で封じ込める。。。
なんとも天才的な脚本に加えて、終始ただよう緊張感。セックスシーンは1度もないのに、とてつもなく官能的な雰囲気が作品全体に。
兄の憤りがピークに達して、アスペクト比が、せっませまになって、もうここでUSAのジャケットという分かりやすすぎる演出にもほれぼれ。さらに親切にも「アメリカうんざり」みたいな曲が流れて、トムはこの保守的なド田舎を去っていく。エゴのかたまりフランシスをアメリカに例えまっか!どんな頭してんねやドランはん。
この作品が素晴らしいのが、説明しなさすぎるとこ。誰がゲイで、とかすら説明なし。ギョームの姿すら出てこない。このゆだねる感じ、けど難解すぎたらオナニー映画。このバランスがドラン様は天才的ですね。
しかもラストも、ゆだねてるようでいて、ちゃんと伏線があるからうまく完結しているという。。。恐ろしい。
ギョームの実体がないことが不気味でありながら、兄フランシスもパートナーのトムも、ギョームの「代わり」を探してる感が強まる。兄フランシスもやっぱゲイなのでは?
とにかく、努力ではどうにもならない部分の才能を改めて見せつけられる安定のドラン作品でした。超満足。
「10月のトウモロコシ畑はナイフだ。」