浮かれたアイデンティティー

トム・アット・ザ・ファームの浮かれたアイデンティティーのレビュー・感想・評価

3.9
忙しなく書き殴られる文字。
「今の状態はまるで僕自身の一部が死んだのと同じ 僕はどうしても泣くことができない 頭の中から抜け落ちてしまった “悲しみ”という概念が 今残された者が君のいない世界でできることは 君の代わりを見つけること 」

映画中、トムの表情は終始止まっているかのようだった。
自分の思い込んでいた人物像とはまた別の世界を持っていた、生きていた時の愛する人の、いくつもの顔をもう彼のいない世界で知る。
やはり、ドランの作品は後味が悪く(良い意味で)ED後も引きずる。案の定、こちらの作品も覚悟して見て良かった。

この映画は、エンディングが終わったら冒頭をもう一度再生するのをオススメ。