磔刑

トム・アット・ザ・ファームの磔刑のレビュー・感想・評価

2.1
「田舎に泊まろう!!」

サスペンスの語り口は上手い。「この後どうなんねん」とグイグイ物語に引き込まれる。だが、それと同時に「コレなんかあるっぽい雰囲気出してるけど、実はオチとか用意してないんじゃね?」と思え、2つの意味でハラハラしながら観てた。

突然田舎に放り込まれ、ヤベー村人またはヤベー家族に追い回される系ホラーってあるけど、終始そんな雰囲気で進む。しかし、惜しむらくはヤベー村人どころか、チョイ気味悪い程度の人畜無害な家族しか登場しないので作品に一切爆発力がない。なので90分程度の作品なのだが体感2時間超えに思えた。

緊張感が終始張り詰めているので退屈はしないのだが、いかんせん進んだ先にオチがないので肩透かしにあい、なんだか消化不足に感じる。途中から始まるトム(グザヴィエ・ドラン)の農場生活を見ていても、「何でさっさと農場から出ないんだ?」って疑問が付きまとう。農家の兄の寂しい生活に絆されたにしても理由、動機、キッカケが明確でないので異質なドラマに感情移入する隙間がない。なので「コイツら何してんだ?」って他人事の気持ちでしかドラマを受け取れず、恐怖に対するワクワク感が作品内で消費できなかった。

いや、確かにトムが暴力ホモに気持ちが傾いく様を繊細、時には大胆な描写で映し出してるので人物の感情の変遷を100%が理解出来ない訳じゃない。だか踏み込み方が中途半端(情報量、明確な描写の少なさ)なので流石に共感には至らないかなと。それに暴力ゲイ兄さんの元を離れるキッカケもただ単に我に帰ったのか、田舎生活に飽きたのか、ストーリーガン無視でテーマの帰結に走った末なのか、それすら分からずキョトンとしてしまった。(同性愛がテーマの作品って大体異性間の恋愛に通じる部分が多い。なのでノンケでも自然とストーリーがはいってくるのだが、今作の繊細さ(?)はノンケには全然理解出来ない。そもそも両方いわゆるメンヘラの類いでは??益々共感できないゾ!!共依存!?んな事知るか!!)

作品を通して言いたい事があるんでしょうけど、これじゃ余計に伝わらんだろって作品の筆頭である。雰囲気が良いだけに残念だ。安直だが2、3死人出してりゃもっと盛り上がった。この演出力をエンタメ映画で生かして欲しいっス。
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