ねこ無双

トム・アット・ザ・ファームのねこ無双のレビュー・感想・評価

4.5
巷でよく聞く名前グザヴィエ・ドラン。良くは知らないけど、そんな評判なら観てみよう!という事で、とっつきやすそうなサスペンスタッチのこの作品から。

恋人が事故死し、葬儀に訪れた主人公。
田舎町の広大な農場には恋人の母と兄が二人っきりで暮らしていた。
この兄が支配的な態度で、感に障ると笑っちゃうくらいすぐ主人公に暴力を振るう。
会ってそんなに経ってないのに!

前半はなんとなく眺め観という感じだったんですが、怪我をして行った病院で医師ににっこり笑って嘘をつく主人公にどきりとさせられ、映画の中へ。

兄はなぜか町で孤立していて、そして弟の秘密を母に隠しておくように主人公に支配的に迫る。母は息子を亡くし悲嘆にくれていて、三者三様心に空洞を抱えている。
主人公と恋人の兄が共依存的な関係に変化してゆく感じは、暴力的でなぜか官能的。濃いです。
ここにいたら苦しいだけだから抜け出さないと駄目だってわかってても、抜け出せない関係。

後半の展開は非常にスリリング。
そして、立ち寄ったモーテルでのシーン…。
主人公が車のハンドルを固く握り直すショット。この後の選択は…という終わり方に惹かれ、もう一度観たくなるような。
この映画を思い出すと、ドランの苦虫を潰したような笑いの表情がなぜか浮かびます。
この映画は何の映画かって聞かれたら難しいな…。恋愛映画みたいなんだけど、恋愛映画じゃないんですよね。サスペンスのようで、サスペンスじゃないような。自分の中でジャンル分けが出来なかった。