トム・アット・ザ・ファームの作品情報・感想・評価

トム・アット・ザ・ファーム2013年製作の映画)

TOM A LA FERME

上映日:2014年10月25日

製作国:

上映時間:102分

3.6

あらすじ

「トム・アット・ザ・ファーム」に投稿された感想・評価

グザヴィエ・ドランの作品を観るのはこれが4作目。
毎回違った魅力を見せてくれる彼、一体どれほどの引き出しを持ってるんだろうか。
好きな監督であっても当たり外れはあるもので、今回はどうだろうと思っていたのだけれど、またヤられてしまった。

主人公トムが、亡くなった恋人ギョームの実家を訪れる。
ギョームの兄フランシスからゲイであったことを隠せと脅された為に、『良き友人であった』と嘘で塗り固められ始まった田舎での生活。
終始不穏な空気が流れ、居た堪れない気持ちが神経を張り詰めさせ、体を重くさせる。

真実を知るギョームの兄フランシスの暴力的圧力から逃げ出すチャンスは何度もあったはず。
しかし、トムには支配されたいという欲求が心の奥底に眠っていたのかもしれない。
他でも無く、自分が愛した彼と同じ匂いのする危険な男に。
タンゴを踊るシーンはゾクゾクする程素敵だった。

トムにとって絶対的な“支配者”と化していたフランシス自身、父や弟に置いていかれ、あの母親と二人きり生きてこなくてはならなかった“隷属者”でもあるのでしょう。
支配体系のトライアングルがあったとしたら、頂点に君臨し続けていたのは常に母親であっただろうから。
それは常に一方通行のもの。
近隣の住人からも距離を置かれている今、トムが農場に居たあの時間というのは、その形は非常に歪でありながらもフランシスのこれまでの人生に無かったバランスを取ることが出来ていたひと時であったのだと思う。
狂気じみた支配と隷属のバランス。
フランシスがこれからどんな風に生きていくのか・・・果たしてその人生は“生きている”と言えるのかどうかを考えてしまった。
トムだって、あの農場で身体に刻み込まれた感覚からはきっと逃れられやしないのではないだろうか。

こんなの嫌だ、観ていたくないって背を向けたくなるよ。
だけど『嘘おっしゃい。本当は欲しいくせに。』って囁かれてる。
何を恐れているのか、何を欲しているのか。
きっと心はとっくに気づいているのでしょう。
みぎも

みぎもの感想・評価

4.5

このレビューはネタバレを含みます

すんばらしい心理描写だった!


フランシスから逃げられないのは暴力による圧倒的支配と、ギョームに似てるからってのと、フランシス自身の魅力があるからなんだろう。
あとトムがドMすぎるよね。
フランシスエロすぎるでしょ~

フランシスが言ってたまんまのことを、まるで意志がなくなってしまったお人形さんのような表情でサラに話す場面とかゾッとした。
ドランすげえな~

そんなフランシスの支配者は母そのものっていうところにドランぽさを感じざるを得ない。
9年前の事件のことを母が知らないわけないし、地域の人から距離を置かれてることくらい分かってるはず。
トムの傷を見たらフランシスを疑うはずなのに、機械で怪我したって聞いて平手打ちするだけでそれ以上問い詰めないあたり、母とフランシスの異常な共依存関係も感じさせる。
母はギョームの性癖に気づいてたんじゃないのか?

トムが支配から逃れたあと、口が避けてしまった彼の姿を正視せず、フランシスの後ろ姿を思い出しちゃうあたり、後ろ髪引かれまくってるじゃんよ~という危うさを感じて、最後の最後まで目が離せなかった。
青信号でトムはどこに向かったのか
畑に逃げ込むな!
舞台がカナダ
暴力ニキの激ダサUSAジャケット
アメリカなんてうんざりだ

なるほど…。
すごいな〜グサヴィエドラン

お見事!!という感じ

スリル満点だけど描き方が口説くないというか、

インタビューでも言ってたけど、

"ゲイを嫌っているということだけに焦点を当てたくない"

だからだんだん濃くなる感じがあって
よかった

やっぱり監督やって主演やって脚本も自分で書いて、才能ありすぎて、、
感情の緩急がすごい、歪みまくった愛情がまさに狂気ってかんじ
karayu

karayuの感想・評価

3.6
「マイ・マザー」「mommy」と、彼の撮った作品を先日見たわけですが、それらに描かれていた周囲への"愛"やそれによる葛藤とは全く異なる愛の姿が描かれていました。此方は愛でも自己肯定の自己愛。

グザヴィエドラン演じるトムの恋人ギョームは事故死し、その葬儀に出席するためトムは彼の実家を訪れましたが、そこには悲しみにくれるギョームの母アガットの姿。母の更なる悲しみを危惧したギョームの兄フランシスはトムとギョームがカップルだった事を口止めします。フランシスの狂気染みた人間性を炙り出しミステリアスにサスペンスタッチで描いた物語。

全く個人的な好みですが、グザヴィエドランの映画のジャケットとコピーはなんて秀逸なんでしょう。「僕たちは、愛し方を学ぶ前に、嘘のつき方を覚えた」

今作では映画監督、主演など映画に対するアプローチは勿論ですが、サイコアナリスト的な視点から自流の精神分析的の結果をアカデミックな視点を通して映し出しているように感じました。
彼には、そんな映画に対する俯瞰というか第3の目の様な、多面性観測を感じます。
例えば学者が仮説を立てて検証して、それを論文という形で発表するように、彼は人の持つサイコ気質を炙り出し映画の中で仮説立てながら実証し、それを映画というスキームでアウトプットしているように感じます。

今作もテーマは愛なのかもしれませんが、他人への愛ではありません。トムへの心身の束縛は一見すると狂気でありサイコなのですが、その根幹にあるのはフランシスの身勝手な自己愛でしょう。自分を守る為にトムを犠牲に。
母親に対しては所謂普通の感情論で動くフランシスですが、トムには自分の意のままにしなくれば暴力や暴言で解決する。その差別的言動が身勝手に感じるので自己愛的であると。

タイトルの通り農場をメインに繰り広げられる物語は農場のどこか暖かなイメージとは裏腹に狂気じみていて凍てつくような描写。

グザヴィエドランの作品は抽象的にも思いますが、そこには確かなメッセージが有ります。しかし、この映画に隠されたメッセージは難解でした。一種のフェチィシズムとも言えるのかもしれません。
田舎という閉塞的人間関係とフランシスの自己愛は比例関係に見えました。

母親の高らかな笑い声も狂気を感じます。初めて笑みを浮かべたトムも何処かで狂気でフランシスに縛られた自分を笑い飛ばしているかのよう。描写はないものの、因縁をつけられ殴られたと読めるトムの顔。

バックグラウンドが描かれていないので、彼らの心理背景も理解することはできませんでした。元からサイコなのか、弟を失ってサイコになったのか。

幾度かフランシスから逃げ延びようとしたトムでしたが、ことごとく失敗。というよりかは敢えての失敗だったのでしょうか。よくわかりません。
ちぃ

ちぃの感想・評価

3.8
ドラン作品まだ2つしか観てないけど、かなり好きかも!

主人公トムは恋人を25歳の若さで亡くし、葬式の為に彼の田舎の実家を訪問する。
家族は母親と長男2人で、長男は牧場と広大な土地の畑の仕事をしつつ、母親から離れられずに暮らしていた。
兄だけは弟がゲイだと言うことを知っていて、母親にバレないように上手くやれと威圧的かつ暴力的なやり方で釘をさす。
そのうちにもう少し滞在する様に同じ様にトムを支配してゆくのだが…

静かな狂気、孤独感、共依存、田舎の閉鎖的な空気、なんか色んなものが詰まってて言葉では言い表せないけど、なんというか圧倒されたし、撮り方とか含めて独特な雰囲気の作品だった。
終始漂う重苦しい空気に息が詰まりそうな感覚になった。
けどグイグイ引き込まれて見入ってしまう。
ドランのセンスに圧倒された。
kana

kanaの感想・評価

4.0
純文学
静かな狂気がなんだか美しかった
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