ねこたす

激戦 ハート・オブ・ファイトのねこたすのレビュー・感想・評価

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「波止場」「ロッキー」「ミリオンダラー・ベイビー」「ザ・ファイター」を見ていない人は、そちらを先に見るのをおススメしますぞ! ミリオンダラーについては特に!

冒頭、流れるように数人の状況説明をする。今回の主要な人物たちだ。ボンボンだが、親の金を使わず各地を放浪するスーチー。しかし、親の会社が倒産してしまう。
チン・ファイはボクシングのチャンピオンだった面影はなく、借金取りにに追われるような生活。
クワンは息子を風呂の事故で失ってしまう。
それぞれが傷を負っている。

タイトルの後、総合格闘技の映像。どうやら、賞金が魅力的な大会が開かれるようだ。
スーチーとファイ、二人の人物がすれ違う。まさに運命が交差するよう。ファイは初めスーチーの指導を断る。ジムで働きながらも、格闘技への情熱は冷え切ってしまっている。しかし、スーチーが境遇に自分を重ね、彼と一緒に戦うことにする。

格闘技を題材にした映画ながら、人物描写がしっかりしている。それぞれの過去への葛藤と、それがフラッシュバックする要素。クワンにとっては、夫と息子を失った"水"。ファイはトレーニングでのカウント、1、2、3。八百長で倒れた際のカウントと対比されている。これは波止場オマージュだろうか。

かといって、映画自体が暗いことは全くない。そこは、さすが香港映画。ギャグを的確に入れ込んでくる。ボクササイズのオバちゃん達は強烈だ。
特に、クワンの娘、シウタンとの交流が良い。天真爛漫な彼女とのやり取りは、どこかジャッキー映画のようで、ハートフルなのである。演技っぷりも見事で、彼女たちに幸せなこと、不幸なことが起こっても感情移入することができる。

トレーニングも地味な画が多いが、何より総合格闘技なのでこれまた地味なのである。殴り合わないわけではないのだが、駆け引きや極め技の攻防が主なのでアクション的な熱さは乏しい。しかし、総合に対する知識が無い人でも十分楽しめるだろう。特に、極め技中の顔! そして膨張する筋肉! 浮き出る血管!!! なんと素晴らしいことか!!
練習シーンでは、劇中で重要な曲をバックに軽快に見せる。また、ファイとシウタンたちとの幸せそうな生活も同時に見せていく。最初は立ちでのボクシング中心の練習なのだが、実力が上がってくるとより実践的な関節の練習に移る。
リングや縄を使ったトレーニングをかっこよく見せる。手首のトレーニングは関節技にとってとても重要だ。
男同士の寝技トレーニングを、ソッチのギャグとして使うのも微笑ましい。二人とも演技でなく素の笑いをしているのではないか?と思ってしまうほど。

試合シーンについては、言葉で語るよりも実際に観てもらう方が100倍いいだろう。実際に行われる中継映像とは違い、POVを積極的に使っているところが新しい。
大会では挑戦者側が勝たなくても王座移動が発生するため、中盤の試合で素人のスーチーが勝たなくてもいいという物語的なオイシサがある。

技術では劣っているが、持ち前の意志の強さ、タフネスで突破していく。3戦目に立ちはだかる強敵のビジュアルがまたいい。飛び蹴りのカマシ方もライバルキャラとして100点なのだ。

その後の展開にハッとするのだが、上で言及した映画の良いエッセンスを受け継いでいる。戦うことは誰かの為になるかもしれない。でも、まぎれもない自分の為に彼は戦おうとしているのだ。
おそらく、ロッキー・ステップを意識した階段や自然を使ったトレーニングに燃える。もう一度、あの頃を取り戻すように、身体をいじめる。

年齢に驚くが、勝ち方もまた歴戦の負傷や経験が生み出す。感動的なのである。

もっとラストで泣かせにくることもできただろうが、そこは微笑ましさと笑いを提供するあたり監督分かってるな~。