継

ドラッグ・ウォー 毒戦の継のレビュー・感想・評価

ドラッグ・ウォー 毒戦(2012年製作の映画)
4.0
中国公安警察の麻薬シンジケートへの潜入捜査を描いた映画。
試写を観た公安側に言われ「死体と発砲の数を減らした」らしいんだけど, どこが(^_^;)?って観るたび思うww.
作品によってはエモーショナルに針が振れ過ぎる時があるトー監督。
でも今作は徹頭徹尾ドライ(表面上は?)。
ピンと張り詰めたテンションを保ち一直線に疾走するその結末はある意味見えていて, そこへ向かって容赦なく一気呵成に突っ走る。

ジャン(スン・ホンレイ)の取調べを受ける中, 己の持つ情報が死刑を免れる材料になると感じ取ったテンミン(ルイス・クー)は, 仲間や部下を売る罪悪感などどこ吹く風とばかりに自ら進んで捜査協力を申し出る。
実際, 麻薬の副作用で危機に陥ったジャンはテンミンの的確なアドバイスで救われ, 映画はありがちなバディ・ムービーに一見なりそうな様相を呈しながらもその実まったくそうはならず,
何の説明もなく唐突に幕を開けるストーリーは寧ろ敢えて安易なそれを避け, 余韻を噛み締める余地さえ与えず観る者の感情移入を拒むように呆気なく事切れる。

正義側の筈のジャンは終始不気味な存在であり続け, テンミンの胸中は伺い知れない。互いの部下は1人また1人と被弾して倒れ, クライマックスの銃撃戦では紅一点のベイや全く関係のない子供達までも戦いに巻き込まれてしまう。

『毒戦』という原題で舞台が中国となれば, どうしたって香港ー中国関係がこじれる原因となったアヘン戦争が連想されるが。。


以下は, 全く確証はないので妄想と読み流して頂ければ幸いですが, 

公安(共産党)の意のままに動くテンミンをわざわざ “香港出身” と断っているのは, 自治権侵害に異を唱える意味から?
テンミンの部下が “聾唖” の,“兄弟” である必然性は思い当たらず, 妄想を飛躍させるならば共産党発信の情報以外は “聴けない・聞こえない” 状況下に置かれた香港, ひいては中国本土市民のメタファーなのか?
(公安に立ちはだかり地下へ潜伏して戦い続ける様子は尚更そう思わせる)
通学路(市街地)で銃撃戦(戦争)が起これば女性や子供が巻き込まれ犠牲になるという精一杯の警鐘に加えて,
テンミンが酒席で突然立ち上がって杯を天へ掲げる,やや唐突なシーンは, もしかしたらデモ等による犠牲者へ向けた “一香港人” たる作り手の追悼の意も込められている?

🌂🍎

新幹線に似た高速鉄道や真新しいホテル, 急速な車社会化etc‥ 中国本土での撮影には8か月を要したらしいのですが,
高速道路や街中の至るところで眼を光らす監視カメラや超小型隠しカメラ, 盗聴マイクの方が, 何よりも監視社会たる中国を印象付けるように見えたのは自分だけでしょうか?
先日, ロシア人の作家アクーニンが「本当のロシアはドストエフスキーやトルストイのロシアで, プーチンのロシアではない」と言ってましたが, もしかしたらトーは映画人として, 同じような胸中でいるのかも‥と妄想してしまいます。
継