垂直落下式サミング

罪の手ざわりの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

罪の手ざわり(2013年製作の映画)
4.0
実際に起こった四つの事件をモチーフにオムニバス形式で繋ぐ犯罪群像劇。非常に寡黙で暴力的な作品で、主人公となる四人に降りかかる理不尽な仕打ちに対して、彼等がブチキレて犯罪者となってしまう様が武侠映画風の演出で外連味たっぷりに描かれる。
第一部で、殺人を決意した男が肩に猟銃を担ぎ中国の田舎町を闊歩する姿は『タクシードライバー』でトラヴィスが遂に爆発するシーンのような高揚感を覚えた。BGMとして流れる民謡風の不気味な明るさを帯びた好戦的な戦慄や、役者の無粋な人相も相まって強烈な印象で、この場面はポスターアートにして部屋に飾りたいくらい格好いい。他にも第二部の小銃による通り魔殺人、第三部の小太刀を用いた殺陣も非常に凝っている。
変わりゆく中国。二極化する富めるものと貧しきもの。優位な立場を利用して弱者を辱しめる高慢な搾取者に牙を剥く反逆者たち。この映画で描かれるのは、傍観者からすれば突発的で不条理な仕打ちであり、当事者にしてみれば必然的な断罪としての暴力だ。我々はテレビで凶悪犯罪の報道が流されても、ニュースキャスターの言葉を鵜呑みにし、「また貧乏人が金銭関係で揉めて居直ったんだな」という単純なストーリーを勝手に頭の中に思い描いてしまうが、当然加害者にだってのっぺきならない事情があったはずだ。一寸の虫にも五分の魂。意地や尊厳がある。社会的弱者は己の尊厳を守るために、最も安易で有効な手段として拳を振り上げることを選んでしまう。誰も社会の潮流に抗うことはできず、順応できなければその怒りを衝動に任せて発散するしかない。たとえそれが醜い八つ当たりでもだ。