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罪の手ざわりのnetfilmsのレビュー・感想・評価

罪の手ざわり(2013年製作の映画)
3.9
 冒頭、一人の無表情な男がバイクに乗ってどこかへ向かっている。このオープニングは『青の稲妻』とよく似ているが、後ろから男を襲う若者たちが現れたとき、いきなり男は彼らに向かって拳銃を発砲する。男は何人かの人間を殺めるも、一人の男を取り逃がす。その男を後ろから追い、背中に向けて一発の弾丸を発射する。開巻直後、我々はジャ・ジャンクーの有り得ない暴力描写にしばし固まる。これまで一発のガン・ショットもナイフによるアクションも登場しなかった作家の突然の暴力の解禁にこそ、この映画の意外性が詰まっている。映画は一人の主人公ではなく、四人の男女の罪をアンサンブル・プレイではなくオムニバス形式で描く。ここで描かれる暴力は孤独な男の復讐劇である。貧富の格差が広がり、賄賂が横行している中国では、こういう搾取が見えないところで行われている。彼はその不公平さを是正しようと正義感で動くものの、ジャオの手下によって袋叩きにあう。地面に突っ伏した姿をゴルフのスウィングのように豪快に殴られたダーハイはたった一人で彼らを皆殺しにしようと猟銃を持ち出し、殺しのハントを始める。生きる尊厳を踏み躙られた男が、たった一人で敵のアジトへ向かう。口封じのためにもらった賄賂も彼をなだめる証にはならない。

 村長を殺し、村長の妻を殺し、ゴルフと揶揄う男を殺し、ジャオも躊躇なく殺す。それも至近距離から猟銃で弾を打ち込む残虐さで彼は自らの復讐を成し遂げる。2人目の時、オープニングを彩った無表情な男が再度登場する。男の暴力に怯える息子、妻と同じく三男の行動を疑う母親の描写もあり、男は知らずに罪を重ねていく。後半の市民を背後から撃ち殺して財布を奪う様子は残忍そのものでありなかなか正視出来ない。けれどジャンクーの対象の人物を真摯に見つめた目が、暴力そのものを肯定も否定もせず描く。風俗で働く年上の女に恋をしたり、工場で仕事をサボるうちに同僚に致命的なケガを負わせてしまうこともごくありきたりなエピソードであり、どこにでも転がっているアイデアである。極論を言えば、賄賂をもらったり汚職をしたり、女を脅迫して自分のものにすることが罪であるならば、猟銃で至近距離から撃ち殺したり、強盗をしたり、自分の身を守るために正当防衛で刺したり、不慮の事故で友人に大ケガを負わせてしまったことも程度の差こそされ、罪には変わらない。つまり悪というのは常に魔が差した瞬間から生まれてしまう。10年間ずっと悪いことをしてきた人間も、先ほどまで良い行いをしてきた人間も、罪を犯した地点からは同じ犯罪者であり、悪者に姿を変えてしまう。