YasujiOshiba

白ゆき姫殺人事件のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

白ゆき姫殺人事件(2014年製作の映画)
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備忘のために

- ひとことで言えば、ワイドショーとSNSが発達した現代における「薮のなか」という感じの作品だったかな。

- 湊かなえが原作ということで、ずっと避けていたんだけど、今日気分が向いたので見てみたのだが悪くない。ぼくが中村義洋との相性がいいというだけでもなさそうだ。

- 湊かなえは『告白』がトラウマで、映画も見ていないし、その他の作品にも手を出していない。聞けば「イヤミス」(読んだあと嫌な気分になるミステリー)という言葉を広めた作品。けれども作家本人は『告白』を代表作とはしない決意で、その後も作品を書いていたようだ。

- 実際、映画を見るかぎり「イヤミス」ではない。TVワイドショー的世界やツイッターの野次馬たちが、まるでギリシャ悲劇のコロスのように盛り上げるドロドロとした人間模様は健在。けれどもここでは『赤毛のアン』的な世界観が貫かれることで、しなかやさ、軽やかさ、そして強さが浮かび上がっている。(『赤毛のアン』といえば、同じ頃にNHK朝ドラ『花子とアン』が放送されてたな)。

- それにしても綾野剛はよい。下請け映像ディレクターの胡散臭いチンピラ加減がリアルだからこそ、この映画のラストが生きる。この人を最初に知ったのは2011年度下半期の朝ドラ『カーネーション』での尾野真千子との共演だったけど、どんどんすごい役者になってゆく。

- 井上真央は、2011年上半期の朝ドラ『おひさま』で知ったはずなんだけど、当時はただ笑っているだけの印象しかない。それでもその演技が評価されるのは、この映画ではっきりわかる。なにせ、あの菜々緒の若さを前に、対照的な控えめさを微妙な表情の変化だけで表現してしまうのだ。いやあ見事。だから最後の笑顔が生きるわけだもんね。

- それにしても、NHKの朝ドラはいい役者を使うんだな。蓮佛美沙子や谷村美月は最近『べっぴんさん』(2016)で見たばかりだし、貫地谷しおりといえば『ちりとてちん』(2007)だもんね。

- 染谷将太と金子ノブアキは、画面のすみに顔を出してくれるだけで安心できる。NHKの朝ドラにはちょっと出て欲しくないタイプだか、ヤバイ感じがするし、そこが映画なんだと思うんだよね。
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