マヒロ

NOのマヒロのレビュー・感想・評価

NO(2012年製作の映画)
2.5
チリにおいて、長年独裁的な軍事政権を率いたピノチェト将軍に対する信任決議を取る国民投票が行われようとしていた。ピノチェト賛成派を「YES」、反対派を「NO」とし、お互いの主張を投票日まで毎日テレビで15分ずつPRすることとなり、「NO」派の宣伝責任者として、新進気鋭のクリエイターであるレネ(ガエル・ガルシア・ベルナル)が抜擢される……というお話。

ビックリしたのが、今作は基本的にずっとダビングしたビデオみたいなガビガビの画質になっているというところで、輪郭が滲んでいたり画面がザラザラしていたりと、かなり本格的に昔の映像を再現しようとしている。見知った顔のガエル・ガルシア・ベルナルがいなかったら本当にどこかから発掘されてきた映像と言われても信じていたかもしれない。
なんでこんな手法を使っているのか気になっていたが、後で調べたらこの映画は当時の映像フッテージをかなりたくさん使っているみたいで、もしかするとそういう過去の映像に切り替わった時に違和感が無いようにあえてそういう画質にしているのかも。確かに頻繁に質感が変わるとドキュメンタリー感が強くなってしまうし、そこであえて現代側の画質を落とすというのは面白い試み。

互いの悪評を揶揄するような宣伝ばかりだった両派において、レネはあえて相手の「YES」派を批判するだけでなく、「NO」派が政権を握った時に提供出来るであろう明るい未来について描いたCMを作る。これによりネガティブな話題ばかりで政治に対する興味を失っていた若者たちに興味を抱かせ支持を得ることに成功する。
映画的な誇張はほとんどなく、堅実に現実を描いていくような作品で、興味深くはあるがそれほど面白い作品では正直無い。レネが作る映像も、今見ると80年代丸出しな感じのなんとも言えない洗練されてなさがあるもので、革新的かと言われると微妙なところ。当時のチリの状況からしたら全く斬新なものだったのかもしれないが。
硬派な作りはとても好感が持てるが、絵も話も果てしなく地味でらもっと映画的な遊びが欲しかったかなという印象。


(2020.91)
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