MasaichiYaguchi

7番房の奇跡のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

7番房の奇跡(2013年製作の映画)
4.0
色々と突っ込みどころ満載の映画だが、途中から涙腺が決壊して、そんなことはどうでもよくなってしまった。
どうも歳をとる毎に、この手の父子物には益々涙腺が緩くなる。
韓国のアカデミー賞と呼ばれる「大鐘賞」で4部門を受賞し、韓国で4人に1人は観たと言われる本作は、「アイ・アム・サム」を彷彿させるような知的障害の父とその娘との物語を現在と過去を行き来しながら描いていく。
知的年齢6歳の中年男性のイ・ヨングは、間もなく小学校に入学する6歳の娘イェスンと仲睦まじく暮らしている。
そんな二人に青天の霹靂のような事態が勃発する。
それはヨングが凶悪な殺人犯として逮捕されてしまうということ。
ここから健気で純真な父子の茨のような苦難が始まる。
父親ヨングをリュ・スンリョンが、その娘イェスンを二人の女優、幼い頃をカル・ソウォン、成人してからはパク・シネが演じているが、この3人の演技が素晴らしく、現実離れしたストーリーを帳消しにしてくれる。
そしてこの3人が紡ぐ物語を盛り立ててくれるのが、ヨングが寝起きを共にする7番房の5人の仲間たち。
初めはヨングの罪状を知って袋叩きにしていた強面の彼らだったが、やがてヨングの人となりを知り、そして娘のイェスンとの出会いの中で変わっていく。
この娘の名「イェスン」は「イエス・キリスト」を彷彿させる。
父が服役後、保護された施設でイェスンが聖歌隊に入ったり、「12月23日」が「重要な日」として扱われたりして、明らかに本作にはキリスト教的要素が反映されている。
ただ私には、この作品における「イエス」的役割をしているのは娘ではなくヨングだと思う。
彼は、その純真な心で周囲に愛を振りまき、そして「罪の十字架」を背負されているように見える。
「冤罪」や「社会的弱者としての知的障害者」という重いテーマを笑いとファンタジーで包み込んで優しさと愛を届けてくれる本作品、何とも言えないラストの温もりが印象的だった。