Punisher田中

邪願霊のPunisher田中のレビュー・感想・評価

邪願霊(1988年製作の映画)
4.2
これは、アイドル・佐藤恵美をレポートすることになったテレビスタッフの記録映像。
レポーターの沢木恭子が意気揚々と恵美の関係各所に取材していくが、次々と不可解な現象が恭子たちの行手を阻むのだった...

Jホラーの源流とも呼ばれるPOV作品。
50分ほどで完結する手軽さに、かなりテンポの良い進行と明確に""見せない""恐怖演出は凄くグッと来た。
POVものではありがちな、かなりチープな取材モノではなく、「1人のアイドルに着目した偽ドキュメンタリー番組」という土台づくりがかなり丁寧なため、50分という短さでも全然引き込まれた。
一切関係無いが、今作の為に制作されたアイドルの楽曲がかなり作り込まれていて、普通に口ずさんでしまう位に良い仕上がりなのが、ますます現実味を帯びている。
昭和のサブカルに対する熱量、やっぱりおかしいよ...。

しかし、Jホラーの源流といわれる今作だが、映像表現に関しては全然古臭くないのに驚いた。
1カットとそうでない部分の使い分けがかなり上手かったり、あまり変なCGを多用せず、日中の心霊描写で逃げ場の無い恐怖を見事に演出出来ている。
心霊描写なんかは黒沢清御大の「降霊」に似た様な出来なのでマジに怖い。
POVならではの没入感と主観だからこその情報の余白、そして次々と襲いかかってくる恐怖演出の数々は全く1時間以内の作品とは思えないほどの満足感を与えてくれる最高の作品だった。