優しいアロエ

胸騒ぎの恋人の優しいアロエのレビュー・感想・評価

胸騒ぎの恋人(2010年製作の映画)
4.0
〈途絶えてはまた燃える寛容な三角関係〉

 グザヴィエ・ドランが自身の恋の残灰をポップミュージックと鮮烈なカラーリングで彩った。前作『マイ・マザー』同様、ゴダールのような実験的介入が表面を覆うが、その中身は決して軽やかなものではなく、もっとじっとりとしている。(ウォン・カーウァイにも影響を受けているようだが、生憎まだ観ていない)

 亀裂の生じない三角関係を描いた点で、『突然炎のごとく』『はなればなれに』に近いものがある。しかし、これら二作とおおきく異なるのがその構図だ。本作はひとりの女に男Aと男Bが想いを寄せるというオーソドックスな関係ではなく、男Aをめぐってゲイの男Bと女が絶妙な距離感で見えない火花を散らすのだ。

 いっそ完全に燃え尽きてしまえばよい燃殻に最後またボッと火がつく。前進せざるを得ない前進はなんとも悲劇的な余韻を残す。
優しいアロエ

優しいアロエ