それでも夜は明ける(12 Years a Slave)
12年もの間、奴隷として白人に酷使され続けた黒人の物語。
人間が黒人という理由だけで人間らしく暮らすことが許されない時代、普通の生活が理不尽で一気に地獄になることがある時代の事実に基づいた作品である。
こういう史実をしっかりと後世に残していき、反面教師にして誤ちを繰り返さないことは非常に大切だと思うが、今作を鑑賞するのは辛かった。
淡々とドキュメンタリーチックにあえて描いているからこそ救いがないのと、監督自身のオリジナリティから来るメッセージ性はそこまでないが、それでも物凄く伝わってくるものがある。
史実を忠実に再現しようと感じられたのが、黒人が全く人間扱いされていないことと奴隷制度に対しての違和感を持つ白人がブラピの役以外で全くいなかったことがしっかりと描写されていたためである。
奴隷制度が制度として認められていることを越して、神の導きであるとされていた時代が本当にあったということ、そこに違和感を持たない人がいないことはこれほどに怖いことであるのか、というのが伝わってくるし、ソロモンノーサップは奴隷じゃないから助けてくれと奴隷制度そのものについては、触れても制度として認められているから、全く弁明の余地がなく半ばそこを変えるのは諦め気味な感じで表現されていて、それがどうしようもなくきつかったし、現代と比較すると本当に考えられない。
奴隷になったら人の優しい心を持つものまでもが、生きるのに必死で自分のことから中心にどうしても考えるようになってしまうのがリアルだった。
ソロモンノーサップはまさにそうで、それがより伝わってくるからこそ苦しいし辛い。
こういう状態こそがまさに理不尽なんだと悟った。
日本でも、大なり小なり時代によっては、同じようなことが起こってたんだなーと考えるとより信じがたい。
今がこれほどの犠牲の上に成り立っていて、できるだけ多くの人が人らしく生きられるようになってるんだなと改めて実感。
今作のように、奴隷制度そのものが誤ちであったこととして、作品になったのは時代の変化でもあり、とてもよい傾向だと思う。
今は法律、制度によって、様々なことが守られるようになっては来ているものの、会社内や組織の中でも理不尽極まりないことにもがき苦しんでる人はいて、そういう人こそ法律や制度を駆使できない人も多いのではないか。
法律や制度が整って、全体の当たり前や常識が変わっていったとしても、結局は会社や組織となったときに大事になってくるのは、その個人個人であることは忘れてはいけない。
職場や学校でのいじめ問題、家庭での虐待問題、過労死など、数え切れないような今作と同じような問題で苦しんでる人がいる。
逆に奴隷制度があったとしても、それがよくないものとして制御する心をその人が持っていれば、奴隷制度そのものが行使されないはずで、それはいじめや虐待なども同じ。
結局巡り巡って、最終的には人に終着されていくのである。
そのことを強く感じた作品でもあった。
P.S.
邦題に賛否両論あるみたいですが、個人的には辛く苦しい日々を夜と捉える意味合いと夜が唯一寝ることで夢を見れて現実逃避ができるのに明けてしまうという意味合いの両方が込められているような気がして、なるほどと思った。