Shelby

それでも夜は明けるのShelbyのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
3.9
アカデミー賞作品賞受賞した映画「それでも夜は明ける」正直、邦題からして、ラストの救いを期待していたのだが、全くそんなことは用意されておらず、胸の蟠りが解消されることなく終わってしまった。

自由黒人であったにも関わらず誘拐され、奴隷として売られ12年間奴隷として生きた
実在の人物ソロモン・ノーサップの自伝を元にした実話ベースの作品。初めて黒人監督の作品がアカデミー賞を受賞した記念すべき作品でもある。

自由黒人とは、アメリカの歴史において法的に奴隷ではない黒人という地位にあった人々を指す。
要は、奴隷として労働力にならずにすむ特権。その自由黒人である主人公ソロモンは、愛する家族とともに裕福でゆとりのある生活を送っていた。そんななか、仕事の依頼をしてきた白人2人組に騙され、あれよあれよと奴隷への道を歩むことに。
今まで、バイオリンを弾くために使っていた腕を、労働に費やすことを余儀なくされる。そして、12年もの間を、人として扱われることなくただの労働力として犬畜生にも劣る不当な扱いを受けながら、
夜が明けるのを、
救いの手が差し伸べられるのを、
ひたすらに待つ日々が始まる。

こんな不当な扱いを同じ人間が行っていたというのだから驚きが隠せない。奴隷達に対して血が吹き出し、肉が裂けるまで鞭打ちを行う教育を、いとも容易くやってのけてしまう白人達。時代とはいえ、奴隷制度なんておぞましいものが許されていたのかと思うと背筋が凍る思いであった。

ソロモンがひたすらに訴え続けていたのは、「自分は自由黒人だ」ということ。
それは、根本的な解決である、奴隷制度の撤廃なんかではなく、自分はここで奴隷として扱われるべき存在ではないということだけ。結果、ソロモンは12年と長い年月を経て、途中で奴隷制度から解放されることが出来た。ただし、そこに、普遍的な正義など存在していない。あくまでも自分の身の安全のみだったのが、印象的だった。

虐げられてきた歴史を。そして、同じ人間の中で優劣をつけてきた悍ましい過去を。決して忘れてはならない。
繰り返すことがないよう戒めの映画として、この映画は素晴らしかった。
Shelby

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