チキン女郎

それでも夜は明けるのチキン女郎のレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
3.5
差別というより「運や宿命」、「暴力」には抗えない恐怖を感じさせられた。

悔しいけど人は「生まれた時代」、「場所」、「環境」によって人生の苦楽や幸や不幸はほぼ決まってしまう。

現代においてもアフリカでは飢餓や貧困にあえぐ人達がいて、中東ではテロや爆撃、拉致に怯えて戦々恐々と暮らす人もいれば、欧米の金持ちの2世はバカでかい家に住み高級車やクルーザーを乗り回して贅沢三昧な生活をしている人もいる。日本もバブル期には豪遊できたが、今では質素な生活を強いられている。こういった努力ではどうしようもない運というものに人生を大きく左右される不条理な現実にはやるせなくなる。

基本的に金持ちの子供はずっと金に不自由しないし、貧乏人の子供はずっと貧乏である。成り上がりの成功者は一握りであって、大半の人間は生まれ育った生活レベルと同程度の生活をし続けることになる。嫌だなぁ~。
奴隷達も奴隷から抜け出す手段や知識も無いから一生奴隷として扱われ先祖代々孫末裔までずっと奴隷なのだ。

主人公を除いて奴隷達が暴力や不当な扱いに対して反抗もせず黙って耐えているのを見て「学習性無力感」という実験を思い出した。
これは回避困難な電気ショックを繰り返し与えられたイヌは、回避できる電気ショックを与えられた場合でもその電気ショックから逃れようとしなくなるという実験結果である。
つまり自分がどんなに努力しても苦しみから逃れられないと学んでしまい絶望し無力感に陥り、逃げるための努力をすることもできなくなる状態になる。
奴隷達もこの状況に陥っている。(そりゃ肉が抉られる程ムチで叩きまくられたら恐怖で服従せざるを得なくなる)ナチス強制収容所の囚人達も同様だ。

暴力は人を無力化し、判断も思考も意志も削がし操り人形にしてしまう。

仕返しが怖いという理由でいじめやDVから逃れられない人達も大勢いるわけだし、人を支配するには暴力が最も有効で手っ取り早いため、暴力による支配は世界中の至る所でこれからも変わることなく行われ続けるのだ。

やっぱり金と暴力が最も強大なパワーを持ってるんだなぁ。嫌だなぁ~。