唯

ウォルト・ディズニーの約束の唯のレビュー・感想・評価

3.4
作り手それぞれが作品への情熱とプロとしてのプライドを持つが故に、作品創作に於ける衝突は避けられない。
映画制作もクライアントワークなのだと実感するし。
映画は、一人では決して作れない。

作品を作るということは、自己と向き合う過程でもある。
夢を見て現実で上手く生きられなかった父の存在がトラヴァースの人生に暗い影を落とすが、彼女はファンタジーを描くのに、ミュージカルにされることを拒む。
このプロセスに疑問を感じたが、それはつまり、父に対する贖罪の気持ちと幼い頃の孤独な自分に対する慰めとして描いた物語だからこそ、そこに他者を立ち入らせることを恐れた、ということなのだろう。

私達は過去に支配されて縛られて生きている。
自分を許して初めて前に進める。
優しさを受け取る優しさが必要と言うが、優しさを受け取れないのはその人が優しくないからではなく、優しさを受け取ることを自分に許可していないからのはず。

「想像の力で人の心を癒し、尽きせぬ希望を与える」
ディズニーでの制作が進むにつれ、徐々に童心に還って行くトラヴァース。
他人の手が加えられたストーリーを客観的に観ることは、彼女を癒すことに繋がっただろう。
唯