竜平

ウォルト・ディズニーの約束の竜平のレビュー・感想・評価

4.1
1961年、児童文学「メアリー・ポピンズ」の映画化を望むウォルト・ディズニーらと、その権利を持つ原作者P.L. トラヴァースの間にあったという実話を描く。

今作の大元である映画『メリー・ポピンズ』をようやく見れたもんでこっちもようやく鑑賞。まず大前提として、これはやっぱりその1964年の映画のほうを先に見とくべき、絶対そのほうが今作も楽しめる。これってきっとデヴィッド・フィンチャーの『Mank/マンク』と同じパターンだろうね、ってのは本当に関係ない話。20年に渡り映画化を頑なに断ってきたというP.L. トラヴァース、演じるのがエマ・トンプソン。そしてウォルト・ディズニーを演じるのがトム・ハンクス。性格やら言動やらいきなりクセ者登場、かと思いきやまた違うタイプのクセ者が登場、みたいな序盤の流れからまず楽しい。そんで序盤からしっかり前途多難という。この原作者の女性、頑固だし「ノー」ばかりだしで単なる意地悪にも見えるんだけども、度々挟まれる彼女の回想シーンと共に知れるのが作品のファンタジーのルーツや、思い入れや譲れないもの、更には家族、とくに父との過去、つらく切ない思い出というもの。金ではない「何か」が見えてくるところにグッとくるし、両者の対話の様子にも次第に胸が熱くなる。ポール・ジアマッティや、回想ではコリン・ファレルなど、脇を固めるキャストたちがこれまた素晴らしかったりして。

実際に映画化されたほうもバッチリ楽しんだけど、その裏側を描いた今作と合わさるとまた二倍も三倍も楽しめちゃうという、これって凄いことだなと。当たり前のことかもしれないけどもどんな原作にもしっかり原作者の意図や思い入れというのがあって、またその人自身にしかわかり得ない大切なものも詰まってるんだよね。それを広げたい、もっとたくさんの人に知らせたいという他者の熱意と掛け合わさった時に名作は生まれるのかな、なんて再確認。終盤では思わず涙。てか原題が『Saving Mr.Banks(バンクス氏を救う)』なんだけど、ここらへんの意味合いや繋がりにも感動。まぁわかりやすくするためにこの邦題になっちゃったのかな、でも今作の主人公は完全にエマ・トンプソン扮するP.L. トラヴァースのほうだったし、そんなこんなで原題のままのほうが良かったんじゃないかなー、もったいないなー、ってな苦言は置いとくとする。

いやしかし今作を見てから再び『メリー・ポピンズ』を見たら絶対そっちでも泣いちゃうと思う。ぜひともセットで見てほしい。
竜平

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