ゆず

大統領の執事の涙のゆずのレビュー・感想・評価

大統領の執事の涙(2013年製作の映画)
3.9
ホワイトハウスのバトラー(執事)として34年間も勤め、8人の大統領の下で歴史的瞬間を見てきた黒人執事ユージン・アレンがモデルになっている伝記映画。劇中では、フォレスト・ウィテカーがセシル・ゲインズという主人公を演じる。
セシルが何かした、大統領の傍で活躍した、…というよりは、むしろ「何もしなかった」「何もしないということを貫いた」という印象をもった。
黒人奴隷だった父親を目の前で殺され、黒人差別を嫌というほど知っているセシルだが、大統領に意見ができる立場にあっても政治的な要求をすることはけしてない。
それは、彼がホワイトハウスの執事であり、「まるでいないように振る舞う」ことが執事には求められるからだ。
職務を完璧に遂行する。そのことに心を砕き続けたのではないだろうか。

一方、息子ルイスはセシルとは正反対で、黒人公民権運動に参加し、ブラックパンサー党として反政府的な活動に染まっていく。
父親と息子の対立は、現実と理想、秩序と自由の対立を表していて、この両極端な親子のドラマがこの映画の見所になっている。
むしろ大統領とのエピソードは添え物のように感じる。タイトルは「大統領の執事の涙」なのに…。
歴代大統領についてはあまり語られず、公民権運動についてはいろいろ勉強になる。

あと、ひとつ気になったのが、ルイスが活動家だと職場に知られているのに、相変わらずセシルは執事として雇われているのがすごいと思った。
親と子を完全に別の人格として扱う国民性(?)が出ている。
家族が反社会的な活動している者を、普通は政府の中枢に入れないと思うのだが。
それだけセシル自身の仕事ぶりや人柄が信頼されていたのかもしれない。

6/3 大統領の執事の涙 録画吹替
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