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大統領の執事の涙のxyuchanxのレビュー・感想・評価

大統領の執事の涙(2013年製作の映画)
3.8
公民権運動の歴史を通じて、アメリカって国の成り立ちを少し理解できた気がする。

農園に生まれ、地主に母を暴行され父親を射殺された主人公セシル。農園を逃げ出し盗みに入った店で拾われ懸命に働き、のちにホワイトハウスの執事として34年間、歴代の大統領に仕えた男。

家族を養うため、そして国に仕える仕事への誇りから、家庭を顧みず仕事に没頭した。長男は父とは真逆の公民権運動の活動家となって絶縁し、次男をもヴェトナム戦争で失う。壊れ行く家族を思い酒に溺れた妻。

彼はなんのために戦っていたのか。名優フォレスト・ウィテカーの憂いを帯びた演技はいつも以上に素晴らしく、メイクも含め本当に苦悩しながら歳をとっていくようでした。

ちなみに放題の「涙」は余計ですね。

妻役を演じたオプラ・ウィンフリー、セシルの母役マライア・キャリー、テレンス・ハワード、レニー・クラヴィッツ、アイゼンハワーをロビン・ウィリアムズ、ケネディをジェームズ・マースデン、ニクソンをジョン・キューザック、レーガン夫妻をアラン・リックマン、ジェーン・フォンダと、脇を固める助演陣も恐ろしく豪華。あんま似てないけど、癖ある役者達の大統領役は十分楽しめます。

マルコムXは白人に仕える「ハウスニグロ」を批判し暴力も辞さず白人と同等の権利を要求し続けたわけだけど、キング牧師がセシルの長男に対して語った言葉こそが、この映画の核心だろう。

「執事達は人種を超えたプロフェッショナリズムを見せることで紋切型の黒人像を変えてきた戦士なのだ」

2008年に黒人初の大統領となったオバマと、レーガンのパーティに招かれて自分がお飾りだと感じた主人公のシーンに伏線を感じたのは深読みだろうか。

実際にも主人公はオバマ大統領に謁見できたらしいが、その誇らしい姿も見てみたかった。

2時間以上の映画なのに、もっと掘り下げて欲しいと思わされました。
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