だいすけ

大統領の執事の涙のだいすけのレビュー・感想・評価

大統領の執事の涙(2013年製作の映画)
4.0
良作。人種問題にサーチライトを当てた形でアメリカの時代の移ろいを目にすることができる。主人公セシルの想起を彼自身のヴォイス・オーヴァーとしてはさんだり、実際の事件の静止画や映像を用いるなど、ドキュメンタリータッチな手法が取り入れられることで、史実としての重みが増している。特に面白いと思ったのが、セシルが仕えた歴代大統領を忠実な再現VTRのごとく描いていたことだ。彼らの個性や政治的スタンスが一目瞭然である。

物語中で激しく対立するセシルと息子ルイスは、手段は違えど、黒人の誇りを守るという共通の目的のために戦ったんだな。ただ、セシルのやり方には白人に迎合している部分があって、その点で断固として譲らなかったルイスと決定的に違った。セシルが間違ってたとは全く思わない。大統領の側に仕えて、「紋切り型の黒人像を変える」ことで、人知れず彼らの心を動かしたかもしれない。彼はもはやホワイトハウスの要人である。一方で、公民権運動のような強行的な訴えが無ければ、今の黒人の地位はなかったことも確かだ。作中登場する60年代の映画『夜の大捜査線』のシドニー・ポワチエは、ルイスいわく「白人が好む黒人像」だ。真の意味で白人に迎合しない本作のような映画が世に送り出されるようになったのは、明白な時代の変化だと思う。よく、大統領や首相の任期が終わると「結局なにも変わらなかった」と落胆する世間の声が聞こえてくるけれども、長いスパンでみると時代は良くなっていて、それは、勇気ある行動を起こす人々がいるからこそなのだと感じた。
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