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収容病棟の&yのレビュー・感想・評価

収容病棟(2013年製作の映画)
4.0
【2014/6/29:イメージフォーラム】中国の不可視な闇にこっそり入り込んでみたら、思いの外ユーモラス!…なんだけど、だからこそガツンとくるよね、っていう。そういう4時間でした。
かなり語弊があるかもしれないが、まるで動物園を覗いてるみたいで。楽しいけどみんなキてるね、と。閉所に狂った動物がぐるぐる回り続けるようにロの字型の回廊を回り続ける人、衝撃の部屋ション(見慣れるとフツーに感じる)、身体になんか書きまくる人、鉄格子越しの庭の眺め、投薬や食事、軽めのラブ。
ここでの日常は、ぜひ体験したい!と思えるようなものではないけど、決して絶望的でもない。誤解を恐れずに言えば、あったかいし、楽しそうだし、自由。あれ?奔放な彼らと、息苦しい私たち、どっちが檻の中だ?と、時折わかんなくなる。後半の、家に戻った収容患者の後ろ姿を追うカットを見つめ、ますますわかんなくなる。
それもこれもこの作品が檻の中を追体験させるからであって、そんな画を撮ることができる王兵は透明人間になる薬を服薬して撮影に臨んだとしか思えず。完全に「いない」ことになってる。
もちろんここに「リトル中国」を重ねることは容易だし、改善せねばならないことがたくさんあるし、けっこうまともな人もフツーにここ入れられちゃうって言ってるラストのテロップは衝撃的(そりゃまともな人がここにいたらおかしくなるわ)。けど、良い意味で編集されてないので無駄がたくさんあって、余白を孕んだ日常をそのまま受け取ることができる。日常ってのはそもそも無駄なことだらけだし、それらごとパッケージングすることによって初めて見えてくるものはたくさんある。
タイトルの重苦しさや長さでかなり身構えて観たが、余白のおかげか思ったよりライトな印象。時間さえ許せば臆せず観た方がいい。順番はちゃんと前編から、のほうがいいかな。
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