Yukiko

ダーク・ブラッドのYukikoのレビュー・感想・評価

ダーク・ブラッド(2012年製作の映画)
3.9
2020年1月27日
『ダーク・ブラッド』2012年アメリカ・イギリス・オランダ制作
監督、ジョルジュ・シュルイツァー。

アメリカ西部の砂漠地帯。
車で旅をする夫婦、ハリー(ジョナサン・プライス)と
バフィー(ジュディ・ディビス)。
車が故障し、暗い中、微かな光に導かれて一軒の小屋に
辿り着く。
そこにはネイティブ・アメリカンの血を引いた青年
ボーイ(リヴァー・フェニックス)が一人で暮らしていた。
妻を白血病で亡くし、世間と隔絶して暮らし、世界の
終わりを待っていた。


かつて核実験場だったアメリカ西部の砂漠地帯・・・
どこだろうと検索すると、ネバダ州のようだ。
アメリカはこの実験場で、1951年から58年までは地上
(大気中)での原爆実験を97回実施した。
1963年以降は部分的核実験停止条約が成立したため、
地下核実験に切り替えられた。
現在では臨界前実験を行っている。
別データによると、1951年から1992年にかけて、
925回の核実験が行われたという。
ネバダ核実験場の周辺は砂漠地帯であるが、その南方
にはラス・ヴェガスがある。
1970年代から、周辺のユタ州などの周辺地域住民に
放射線被害と見られる癌の多発などが問題となって
おり、訴訟も起こされている。
(Y-History 教材工房 世界史の窓 アメリカの核実験
から ~転記)

ネバダ州のインディアン保留地。
コソ族、北パイユート族、南パイユート族、プエプロ族、
ショーショーニー族、ユテ族、ワショー族などの
インディアン部族が先住する。
世界初の原子爆弾の実験であるトリニティ実験は、
近隣のニューメキシコ州でおこなわれたが、ネバダ州の
西ショーショーニー族とパイユート族の保留地には、
ネバダ核実験場があり、放射能被害が甚大である。
これらの土地は近年も地下核実験場として使用され
続けており、西ショーショーニー族はこの核実験の
即時停止を求め、スイスの国連に代表団を送り、
何度も提訴を行っている。
米国科学アカデミーは、この州のインディアン保留地
を「国家の犠牲地域」に指定している。
(Wikipediaより転記)

上記の事柄がこの映画の土台となる。
白人から追いやられてアメリカ西部に移ってきた
インディアン達は、今度は核実験のために居住地域を
追われる。
ボーイはインディアンの血筋を引く。
妻は、核実験の放射能被害で亡くなったと思われる。
静かな怒りが終始感じられる。

旅をする夫のハリーは、(ハリーにはハリーの言い分
があるだろうが)ボーイから車を奪ったりと手前勝手な
考え方、態度が感じ取れる。
車を奪われたボーイが生活に困るだろうなんて考えない。
それはアメリカそのもので、文化の遅れてる、弱い立場
の者には何をしても良い…インディアンに対する
アメリカ国家のようだ。

リヴァー・フェニックスが撮影途中で亡くなり、そのまま
になっていたが、監督自身が大病を患って、余命僅かと
宣告されて、本作を完成しようと決めたとのこと。

訴えたかったことが伝わってくる。

映画の途中、幾つかの場面に主人公不在の為、撮影が
できなかった箇所があり、その場面はナレーションで
ストーリーが進んでいる。

ハリーの考え方、感じ方、大いに分かる。
ハリーのように、普通は行動するでしょ、と思う。
でも、インディアン達はハリーの車を黙って直して
くれていた。
Yukiko

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