らいち

スター・ウォーズ/フォースの覚醒のらいちのレビュー・感想・評価

5.0
興奮と嬉しさで涙が出た。ノスタルジーに踊らされたわけではない。シリーズに新たな息吹を与え、力強いドラマに昇華させたことに感動したのだ。
10年ぶりとなるSWシリーズの新作であり、壮大なサーガの第7章となる「フォースの覚醒」は、自分のあらゆる不安をかき消し、期待を大きく上回ってくれた。映画としての完成度という点ではシリーズ最高傑作といえると思う。

物語はエピソード6から30年後の話。エピソード6以降、新たなジェダイは誕生せず、ルークが最後のジェダイになってしまったという設定から始まる。帝国軍の残党から「ファーストオーダー」という新たな組織が誕生し、多くの惑星を滅ぼし、銀河にとって新たな脅威となっている。最後のジェダイであるルークはワケあって行方を眩まして久しく、ファーストオーダーに対抗する共和国側の組織、レイア将軍(元レイア姫)率いるレジスタンスは今こそジェダイの力が必要であるとルークを捜索している。本エピソードでは、ルークを探すレジスタンスと、それを阻もうとするファーストオーダーの戦いが描かれる。

「フォースの均衡なくして銀河の平和なし」という本作の前提にある解釈は的を得ており、フォースを軸に語られる本作のストーリーに強く賛同する。フォースにバランスをもたらすのは、銀河の守護者であるジェダイのみであり、ジェダイの復興なくしては銀河に平和は訪れないのだ。しかし、本作ではその肝心のジェダイは現れない。残されたジェダイ(ルーク)を見つけ出す旅の過程で訪れる、運命的な出会いによって登場するキャラクターたちが本作の主人公になる。

砂漠の惑星に住み、生き別れた家族を待ち続ける孤独な女子「レイ」、幼い頃に連れ去られストームトルーパーになったが良心の呵責から脱走し、レイと運命を共にすることになる「フィン」、ルークを探すミッションを将軍から任されるレジスタンス随一の凄腕パイロット「ポー」、そして、フォースの使い手でありながらダークサイドに墜ち、レジスタンスを駆逐するファーストオーダーの戦士「カイロ・レン」。これらの4名が新生スターウォーズの主要キャラといえるが、彼らが想定外に魅力的だった。

本作を観るまでにシリーズを見返してみた。昔観た当時から長い歳月が流れ、その間にいろんな映画に触れてきた。そして自分の映画に対する趣向もずいぶん変わってきたと思う。それが影響したからなのか、旧シリーズ、新シリーズともに当時観たときよりも感動がだいぶ薄まっていた。それは、リピート鑑賞により鮮度が落ちたことや視覚効果の古めかしさもあるだろうが、おそらく一番大きかったのは「スターウォーズ」という絶対的な世界観のもと、そこに生きるキャラクターがその世界観の設定や造形に依存し過ぎていると感じた点にある。そして自分はキャラクターたちにあまりドラマを感じなかった。

わかりやすい展開、わかりやすいキャラクターはファンタジーにウッテツケだ。それはこれまでのスターウォーズにもあてはまると考えていて、それがシリーズの魅力でもあった。しかし、全く異なる映画だけれど「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズに出会い、ファンタジーとドラマが共存できる現象を目の当たりにし深い感動を覚え、ファンタジー映画への見方が変わった。もちろん世界観ありきのファンタジー映画があってもよいし、それが正解な場合もある。しかし、SWシリーズは違うはずだ。壮大な銀河の戦いを描いた映画であるとともに、世代を越えた家族の物語であるからだ。

ドラマとは登場するキャラクターが息をし、自らの意志を持って行動していることが強く感じられることだ。それは、必ずしも観る側の共感を得られなくてもよい。実際に本作でも「いったい何を考えているのだ?」と思われる点も散見される。しかし、これほどまでにキャラクターの内面を観客側に模索させる過去作はあっただろうか。今まで「その他大勢」で括られてきたストームトルーパーを我が道をゆくキャラとして独立させたのが象徴的であり、キャラの造形ではなく、それぞれのキャラクターに人間としての生々しさを与えようとする意図が明確にみえる。

その意図に応えるためには、世界観とのバランスを保ったキャスティングと、それに起用された演者たちの確かな演技が必要だ。そして本作はその試みに見事成功したといえる。少なくとも後者に関してはシリーズ最高の仕上がりであったと確信する(そもそも過去作には演技力は求められていなかったという見方もできるけど)。新キャストを中心に、ガチで演技ができる人を揃えている。新ヒロインとなったデイジー・リドリーの繊細さと強さを兼ね備えた存在感は堂々たるものだし、一番心配していたジョン・ボイエガは喜怒哀楽を嫌みなく自然体で演じられる俳優であったし、オスカー・アイザックは元々どんな役でハマれる巧い人だ。

そして、個人的に一番印象的だったのは、カイロ・レンを演じたアダム・ドライバーだ。海ドラ「Girls」での個性的なキャラや、脇役として出演した映画の過去作をみても、「ダークサイド」なイメージは微塵もなかったのだが、本作で最も難しい役柄を見事に体現していたと思う。カイロ・レンの邪悪さ、未熟さ、傲り、恐れ、迷いといった個性や感情の移ろいがアダム・ドライバーの複雑な表情から十分に感じとられた。ダースベイダーと同様に自身を「悪」と認識しておらず、自身の行いを正義と認識する信念もちゃんと理解しているようだ。クライマックスの鬼気迫る演技がまた最高で、本作のヒールとしてカッコよかった。

世界的に知られる有名作であると同時に、熱狂的なファンをもつシリーズだけに、脚本には相当な時間と労力がかかったことは本作を観る限り想像に難くない。旧シリーズですら感じられた、「ジェダイ」や「フォース」などといったSWならではの概念におけるロジックの破綻は、本作では皆無に等しく、ほとんど隙がない。ドロイドに対して、人格と同様に愛情をもって扱っているスタンスも嬉しい。新キャラドロイドのBB-8は可愛いんだけど、リアクションが器用過ぎるのが少々気になった。

展開にツッコミどころはあるけれど、ストーリーのダイナミズムやスピード感を殺さない許容の範囲だ。全体像がエピソード4に似ている点や、舞台やクリーチャーに新鮮味がない点など気になる点もあるけれども、それらの多くは「こーしてほしかった」などの個人の好みや願望の問題。些細なことだが、カイロ・レンの十字ライトセーバーは奇をてらい過ぎと思っていたけど、カイロ・レンの不確かさの表れであったり、そもそも機能性があったということがわかり納得できた。「ザ・レイド」のコンビがカメオ出演していたのはよくわらかないけど(笑)。

監督としての才覚どうこうではなく、「スターウォーズ」と完全に区別するべき「スタートレック」を監督していたJJエイブラムスが本作を監督することが本当に嫌だった。しかし結果、面白かったので全然OKです。面白くなかったら文句を言いまくってやる予定だったけど、ここまでの映画を見せられては祝福するしかない。前作からほぼ同じリアルタイムの経過で続編を描けるアドバンテージは、前作キャストの出演をはじめ、過去作へのオマージュを描くのに大きな助けになったと思うが、スターウォーズの世界観を崩すことなく、新たなドラマを注入することに成功し、スリリングでエモーショナル、そして痛快な娯楽作に仕上げた手腕は「さすが」の一言。参りました。

そして、何といってもラストのカタルシスだ。魅せ方が憎いのなんの(嬉笑)。「よっしゃーーー!!」と興奮のあまり脳内で絶叫して感涙。「フォースの共鳴によるフォースの覚醒」という新たな解釈を加えたことは大英断だ。大きな拍手を送りたい。あんな気持ちのいいラストはSWシリーズでは初めてのことであり、JJエイブラムスの作家性が活きた瞬間でもあったと思う。

多くの謎と期待を残し、本作は次作のエピソード8に続く。最高のスタートを切ったJJエイブラムスからバトンを渡されるのは、ライアン・ジョンソンだ。傑作のSF映画「LOOPER」の監督であり、神ドラ「ブレイキング・バッド」の中でも、伝説的な神エピソードとして語り継がれる「オジマンディアス」(思い出すだけで泣けてくる。。。)を監督した人だ。いったいどんなスターウォーズを見せてくれるのか。もう期待しかない。

次作への期待が募るが、とりあえずもうしばらく本エピソードの余韻に浸りたい。
フォースに乾杯。

【88点】