田中宗一郎

スター・ウォーズ/フォースの覚醒の田中宗一郎のレビュー・感想・評価

3.5
期待値があまりに低すぎたのが功を奏したのか、思いの外、大満足でした。細かい演出には何度か鼻白んだりする瞬間もあったものの、美術と脚本に対しては何ひとつ文句なし。最高でした。

何よりも、すべてのキャラクターが「かつて奪われてしまったものを取り戻す」という主題に沿って行動することを軸にした脚本がとても秀逸。しかも、その過程において、旧作(主に『4』)のプロットやディテール、台詞を丹念に反復することで、観客もまた『スター・ウォーズ』不在の時間を取り戻すというメカニズムが駆動する。いやあ、これには終始、興奮するし、感動しますよ。

こうした本作の構造については、ハン・ソロとレイアが再会するシーンでの二人のこんな台詞のやり取りによって、種明かしされています。

レイア「SAME JACKET」
ハン・ソロ「NEW ONE」

こうした見事な脚本は、同じくJJが手がけたリブート版『スター・トレック』とは実に対照的。旧作におけるディテールと小ネタをただランダムに散りばめることに終始し、ファンが長年愛し続けた旧作の世界観、思想、キャラクター属性のすべて蔑ろにすることで世界中のコアなトレッキーたちに殺意を抱かせたリブート版『スター・トレック』の反省があったのか、それとも、やはり究極のエンターテイメント企業、ディズニーというスタジオの凄さなのか。

あ、でも、ミレニアム・ファルコン号のチェスの駒が飛び出すシーンにはちょっとカチンと来たかも。リブート版『スター・トレック』でやらかしまくった、典型的な、ほら、餌あげようか演出。

それにしても、やっぱり演出がなあ。特に、いきなりの引きのショットや、切り返しの繋ぎで、状況を大げさに説明するというドヤ顔演出がどうにも。そこは淡々と繋いで下さいよ。説明するために絵を使わないで下さいよ。それに相変わらず役者を無駄に走らせすぎだよ!とかね。

演出でもっとも素晴らしかったのは、映画冒頭におけるヘルメットに刻印される血の赤。赤という主題は、ダークサイドにおけるライトセーバーにも、C-3POの片腕にも配置されていて、彼の「私だと気づかないかもしれませんよね」という台詞によって、赤という主題がアイデンティティの揺らぎを表象することが示される。あれは実に粋でした。

何にせよ、総じて大満足。今の気分だと、

4>7>5>6>3>2>1

あと、字幕見て、ようやく気付きました。BB-8って、彼のフォルムが名前になってるんですね。可愛い。