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ダラス・バイヤーズクラブのmikanmcsのレビュー・感想・評価

ダラス・バイヤーズクラブ(2013年製作の映画)
4.0
昨日「ラリー・フリント」を観て、彼の妻がエイズで死ぬ部分で本作品を思い出して、久々に再鑑賞しました。実話です。連続して観たら「何があっても自分の信じる正義を貫く」というテーマが「ラリー・フリント」と通底していたので、ちょっと驚きました。

ラリー・フリントは「エロ」に始まって「表現の自由」を追い求めます。本作の主人公ロン・ウッドルーフは「金儲け」に始まり、「エイズ患者の救済」に突き進んでいきます。いずれの作品でも、プア・ホワイトで好き放題やってた主人公が、逮捕やエイズなどの災難に見舞われたことを契機に「自分の正義」に目覚め、公権力との戦いに突き進んでいく姿が描かれ、感動を呼びます。

本作でロンが戦う相手はFDA(アメリカ食品医薬局)です。当時のFDAは副作用が大きく製薬会社の儲けの大きいAZTのみを認可し、他国で認可されているエイズ特効薬の流通を禁止しました。彼らのエイズ対策の怠慢の結果、多くのエイズ患者が死ぬことになりました。

ロンはロデオと酒と女に溺れる不良白人でしたが、売春で自分がHIV陽性になったことを契機に未認可薬の密輸に手を染めます。典型的なホモフォビアだった彼の最初の動機は金儲けだったものの、様々なゲイのエイズ患者と接していくうちに「同じ病気で苦しむ仲間」としての意識に目覚め、、彼らに破格の安値で未認可の薬を配りはじめます。メンツを潰されたFDA等の政府機関がロンの活動を規制しようとしますが、彼は意に介さず身銭を切って救済活動を継続します。

正攻法で政治的な抗議に乗り出すのではなく、「密輸」や「闇医者の処方箋」など、いつもアナーキーな方法で突き進んでいくところに彼の不良キャラが出ていますね。とはいえ彼は単なるアホな田舎者ではなく、政府機関からの攻撃に際していつも逃げ道を見つけ出すストリート・スマートですし、エイズに関する海外の論文を短期間に読みまくって知識を貪欲に吸収し一端の権威になってしまうくらいですから、地頭は良い人なのでしょう。

結局彼は裁判に負けますが、その後FDAも態度を変えましたし、エイズ発症後、余命宣告を受けながら7年も生きながらえたそうです。彼の人生のほとんどは酒と女とドラッグで無為に費やされましたが、最後の7年間で彼の魂は救済されたのだと思います。R.I.P.

最後に、マシュー・マコノヒーは一昨日「リンカーン弁護士」を観たのですが、本作では痩せてしまって、まるで別人。役者って、すごいなあ。。(でも体壊しまっせ、まじで)
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