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ダラス・バイヤーズクラブのmasayaanのレビュー・感想・評価

ダラス・バイヤーズクラブ(2013年製作の映画)
4.0
酒、タバコ、ギャンブルにドラッグ、そしてお得意の女遊び....自らを生粋のカウボーイと名乗るこのセルフィッシュなロデオは、避妊を省いた性行為でHIVウイルスに感染し、余命30日と宣告された後をどのように生きたか?

この映画が、あるいは元になっている題材がリアルなのは、決して大きな社会正義のためだとか、大きな政治思想上の連帯だとか、そういった高尚なものを描いていない点だろう。徹底的に俗で、変に教訓めいていないのだ。

実際、男は徹底した自己利益の追求のために、利害を共にする者たちと渋々ながらも連帯するだけだし、己の利益を阻害し得る社会の制度や行政の不作為に場当たり的に怒るだけだ。それは決して、美しいものではない。が、そこから生まれるグルーヴにだんだん乗ってくる。あるいは本人さえ意識しないほどの強力さで。

惜しむらくは、ハンディ主体のカメラワークか。ブレ感をこまめに調整されたそれは、本来意図されるであろう生々しさを超えたレベルで説明的であり、演出上の意図という点ではいささか平凡である。
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