だいざる

光にふれるのだいざるのレビュー・感想・評価

光にふれる(2012年製作の映画)
4.5
こういう人の優しさがダイレクトに伝わる、観終わった後に気持ちが前向きになれる映画は好きです。
こういう実話を基にした物は「ほら!感動するだろ?」と押し付けがましいものが結構ありますが、この映画は違います。
透明感のある映像。踊るようなピアノの調べ。希望と優しさのあるストーリー。
いずれも素晴らしかった。

台湾出身の盲目のピアニスト、ホアン・ユィシアン。彼の実話をもとに描いた作品。主演はご本人が務めています。
「あの子は目が見えないから一位なんだ。」子供の頃にコンクールで優勝した時に他の子達に言われたこの言葉がトラウマとなり、彼は人前での演奏を拒むようになった。
大学進学をきっかけに寮生活を始めた彼はそこで多くの人々と出会う。友人たちの助けを借りて彼は様々な困難を乗り越えていく。

視覚障害者の方が補助もなく、杖もなしに歩く事がどれだけ不安で大変な事であるかを想像するのは容易い。
1人で歩くときは左手で杖を巧みに使って点字ブロックをなぞり、右手で周辺に障害物がないか確認する。
一歩を踏み出すのに自信がなくなる。常に不安がつきまとう。
寮から学校までの道を何度も人の手を借り往復して、次は自分1人で歩けるようにと道順を頭に叩き込む。
何個目の柱を左、何本目の木を右、ドアノブの高さ、段差、鉢植えなどの障害物の存在の有無。
覚えなくてはならないことは山ほどある。
そうやって新しい生活に必要な道を覚えていく。
簡単なことじゃないし、おいそれと出来ることではない。
それを彼らは日常的にやらなくてはならない。
その苦労を知る事が出来ただけでもこの映画を観る価値はあったと思う。

浜辺でのシーンが、この映画のハイライト。涙がポロポロ流れてきました。
砂浜には点字ブロックがない。
足元は不安定だし杖は役に立たないし、ゴミや貝殻が落ちていたりするかもしれない。
だから歩くのには大きな勇気が必要なはず。
「大丈夫だよ。」この一言をもらえて、その言葉をくれた人を心から信頼して走り出したユィシアンの姿は涙無くして見れませんでした。久しぶりに涙腺崩壊。
こうやって文章にしたためて、思い出して泣けてくるほどに感動的だった。
歩くのには大きな勇気と信頼できる拠り所が必要なんですよね。
きっとそれは人生も一緒。
ユィシアンに限ったことではない。
人生という道を歩いていく上で必要な物を教えてくれる素敵な映画でした。