甘味

野のなななのかの甘味のレビュー・感想・評価

野のなななのか(2014年製作の映画)
4.2
大好きな「この空の花 長岡花火物語」の姉妹編である本作、やっとこさ観賞。
いや〜〜〜凄い。個人的に長岡映画には及ばなかったものの、芦別映画もやっぱりめちゃくちゃ狂ってた。シネマ・ゲルニカ万歳!芸術は爆発だー!

冒頭でパスカルズの演奏が始まった瞬間、キターーー(゚∀゚)ーーー!!!!ってなってソッコー大林ワンダーランドに引きずり込まれる幸せ。
はい来たよ来たよー、怒涛の棒読み長台詞。今回は大人数での掛け合いが多くて白目剥きそうなったわ。例えるならば、10人ぐらいがしゃべくり漫才のテンポで演劇してる感じ。(しっかし、あんな長台詞を常に早口でまくし立てながらも自分の演技が一切崩れない村田雄浩と重松豊に舌を巻いた。さすがベテラン俳優、達者やわ〜)

登場人物達の背景に芦別の歴史等ありとあらゆる莫大な情報が盛り込まれ、更には物語にミステリー的要素もあったりしてとにかくカオス。
因みにタイトルのなななのかとは四十九日の事で、生者と死者の魂が混在する期間だと言われている。

本作のテーマである「人は誰かの為に生まれ、誰かの為に死んでいく」とは即ち輪廻転生であり、そこには監督自身が幼少期に体験した戦争、父親が営んでいた病院で自分が見てきた生と死、2010年に心臓の病で生死を彷徨った事、そしてその後起きた東日本大地震…それら全てへの監督の思いが込められている。また、芦別を映画の街にする事を夢見て尽力し、若くして亡くなったある人に対するレクイエムでもある。

そう、この映画がカオスなのは他でもなく、監督の頭の中で渦巻くモノが洗いざらい全てぶっ込まれてるからなのである。(この空の花も同様)
普通はそんな事したら観れたもんじゃなくなるよねぇ…恐るべし大林マジック。ただただ圧倒されてる間に3時間なんてあっちゅーまに過ぎてったわ。アーティスティックでパワフルで天才としか言いようがない、ほんまに。

現在78歳の大林監督。新作「花筐」が今からとっても楽しみ。これからもどんどん弾けてガンガン攻め続けて行って下さい。
甘味

甘味