ラングってメトロポリスとMくらいしか見てないんちゃうかな。何でこんなに見てなかったんやろ。何も考えずぷらっと見てみた本作だが、これは…大傑作ではないか！ 大当たり！ 冒頭、いきなり、ピストルの大写し。男の手がピストルをとって、ゆっくり画面に近づいてきて、画面から消えてズドン！ おっさんが頭を撃ち抜いて自殺してるんですねー、この撮り方で一気に引き込まれる。で、奥さんが2階から下りて来るんだけど、悲しむ様子はなく、遺書を手に取り、警察でない何者かに電話して、何やら企んでいる様子。翌日、刑事たちが現場の調査にやって来ると、遺書は奥さんが隠したのか、最初からなかったことになってて、奥さんは悲嘆に暮れたフリをしている。この刑事のひとりが主人公で、彼らの暮らす街全体を操る人物が、腐敗した警察をも取り込んで作り上げた巨大な悪の組織の存在に気づき、だれの助けもなく、たった一人でそれに食いついていくのだが……とんでもないことが彼の身を襲いかかる！ という流れで、このとんでもないことが起こる直前の演出がマジですごい。幸せそのものでしかないシーンなのに、それがあまりに細かく演出されてることによって、この後ただ事でないことが起こる予感しかしない。うおおおおお！やべえええ！てなる。最高のシーン。しかも、この映画、熱湯ネタとか、他にもとんでもないことがいくつか起こるんやけど、ギョッとすることはすべて画面の外側で起こってる。直接見えない。だからこそ、恐怖感が増幅する。うまい！ あとは、とにかく全編ものすごいテンポで、どんどんストーリーが進んでいく展開のさせ方が見事としか言いようがない。おもしろさだけでいうと、こんなおもしろい映画もなかなかあるまい。ただ、個人的な好みからいうと、もう少し画面の陰影が深い方が好みかなーと。ノワール的に。でもそうするとこれほどのスピード感を出せないというのもあるか、と考えると理想的なバランスなのかも。本作に出てくる女優が、最初の自殺した奥さんも含めて全員非常に魅力的なこととか、主演の魅力とか、語りたいことは山ほどあるのであるが、長くなるのでこのへんで。ホントに素晴らしかった！ 極上！ ラングもっと見ねばならぬ！
