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アンビリーバブル・トゥルースのpikaのレビュー・感想・評価

4.5
初ハートリー。オススメされたのでまずは初期作から。
始まってソッコーで心掴まれた。何と言葉にしたらいいのか形容できない新鮮な魅力が満載でとにかく好み、とにかくツボ!

誰もが顔見知りの何もない典型的な田舎町に住む大学入学前の少女は核兵器の脅威に怯え、「世界の終わり」を信じる変わり者。
そこに昔殺人事件を起こした若い男が街へ舞い戻り、少女の父親の車の整備工場で働き始める。

少女と男の特異なキャラクター性が社会不安や人間心理などを象徴的に表現しながら劇的ではないあるあるな話ではあるが真実とは、お金とは、生きるとは、まで様々なことを端的かつ多角的にポンポン放り投げてくる。
哲学的に問いかけながらも本質的には恋愛ドラマに落ち着く塩梅が見事で、チープな規模にも関わらず、いやむしろだからこそ膨大な心理が綺麗に整頓されストンと入ってくるようで非常に見応えがある。

中盤まで天井知らずの最高ぷりで何もかもが愛おしくたまらなかったんだが拍子抜けするくらい綺麗に普通に着地したことに若干驚いた。
アメリカ映画にしてカラーのガレル作品のような独特で静かな演出が心地よく、音楽のないシーンも良いし、流れる音楽が逐一魅力的でグッとくる。
良いところと悪いところが人間臭く共存したキャラクターたちが全員愛らしく、他人は気にしない細やかなことが一大事であり、他人が気にする大事も上っ面じゃなく中身で見れば判断が変わってくるというような、真実というものの本質がチラリと覗いてくるドラマが素晴らしい。

クライマックスの淡々とした勘違いと解決展開がちょいとシュールで尻すぼみ感があったけどそれを引いてもずっと見てられるくらい最高だったし、何度も見て浸りたいし、見るたびに違う魅力が見えてきそうな奥行きのある傑作だった。
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