KnightsofOdessa

アンビリーバブル・トゥルースのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

5.0
No.844[全場面で人物の交錯する全タイミングが完璧] 100点

やっぱ天才じゃねえか。昨年の6月くらいに行われたロングアイランド三部作のBlue-ray化クラウドファンディングに参加したくせに色々あって観るのが遅れてしまった。一昔前にハートリー特集上映があったときに上映されてDVD化もされたので、私の心がやる気を失って、よりレア度の高い「トラスト・ミー」に移動してしまったという話は想像に難くないだろう。というわけで今回はやる気を振り絞って鑑賞。どうしてDVDとか買うと積んじゃうんだろう。

あんだけ濃すぎるキャラを方方に配しながらそれぞれが交わる全てのタイミングが完璧という稀有な映画である。私も終末論者でハーバードを蹴る人間になりたかったが、そんなことする勇気もなく普通に大学に入ってしまったことを欠片だけ後悔している。やっぱり推しメンはエイドリアン・シェリー一択だけど、常に見当違いな相手に喧嘩を売る元恋人や娘が心配すぎて拗らせた父親の存在も捨てがたい。

ハートリーの描く家族って、周りの監督たちが描く一辺倒なバラバラ家族と違って、それぞれが別々の方向を向きつつも緩くまとまっているのが本当に美しい。50年代的な"強いお父さんと優しいお母さん"という押し付けがましい理想像でも、現代的な"父性の崩壊"激推しの気が滅入る家庭崩壊ものとも違う、ちょうどその中間にあるような不思議な空間である。ちゃんと愛されつつ反目しつつ(取引しつつ)という、これぞ普遍的家族という感じがしてよろしい。

というか「ニューヨーク・ラブ・ストーリー」→「アンビリーバブル・トゥルース」という変遷と「純愛日記」→「スウェディッシュ・ラブ・ストーリー」という変遷はどっかで交錯してそうで面白い。
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