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同窓生のmaverickのレビュー・感想・評価

同窓生(2013年製作の映画)
4.3
2013年の韓国映画。主演はBIGBANGのT.O.P。


南北問題を考えさせる重たいテーマの作品性。主人公は北の工作員で、命令により韓国に潜入する。学生に偽装し、標的を排除するのが任務だ。主演のT.O.Pは、表情の険しい静かな男を好演。戦闘能力の非常に高い工作員という設定で、ハードなアクションも難なくこなしている。学園生活が清涼剤の扱いになってはいるが、笑いは極力排除した骨太な作品性。もっと軽やかなアイドル路線な作品だと思っていただけに意外だった。

BIGBANGの存在はもちろん知っていたが、曲を聴いたこともないし全然詳しくない。主人公役のT.O.Pも今回初めて演技を拝見したが、びっくりするくらい上手かった。感情を抑えて淡々と任務をこなす冷静さと、怒りに打ち震える激しさのどちらも的確に表現している。アクションシーンの動きは惚れ惚れするかっこよさ。ルックスだけでない彼の存在感が際立っていて見事だった。

共演は『ハナ ~奇跡の46日間~』『海にかかる霧』のハン・イェリ。主人公と彼女との関係性が本作の癒しである。妹役はドラマ『トンイ』など、数々のドラマや映画に子役として出演してきたキム・ユジョン。"国民の妹"という呼び名通りで、主人公の最愛の妹を爽やかに演じる。さらに脇を固めるのは、韓国映画になくてはならないバイプレーヤーばかり。南北問題をしっかり描くに相応しいキャスティングであった。

主人公だけでなく、使い捨てにされる工作員たちの悲劇を描いた話。情勢によってそれは変化し、いとも簡単に切り捨てられる。北も南もどちらも同じ。命の重さなど考えず、自分達の都合のことしか考えない上層部の人間どもに怒りを覚える。人なみの幸せすら許されない彼らの悲しさ。平和の尊さを改めて考えさせる。


テーマはしっかり響く。アクション主体のエンタメ性とのバランスも見事。迫力度は『ジェイソン・ボーン』に迫るものがある。タイトルで損しているが、とても良い作品だった。ラストの余韻で泣ける。
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