ちろる

17歳のちろるのレビュー・感想・評価

17歳(2013年製作の映画)
3.6
少女と大人のに変わる危うい年代の女の心の変化をフランソワ オゾン監督が繊細に切り取ったエロティックでアンニュイな、如何にもフランスらしい作品。

主人公イザベルを演じたマリーヌ ヴァクトのなんとも言えない物憂げな色気とそれと相反するまだ痩せた少女らしい身体が17歳の少女だから持つ魅力を眩しいほどに見せつけてくれた。

バカンスの海辺で処女喪失するまでの無防備なショートパンツと水着の姿から、真っ赤なルージュを唇にひいて、大人のスーツ姿になり自らの性を売るに至るイザベルの心の変化について、物語上では決して明らかにはせずにただ心の渇きを埋めるように娼婦となっていくイザベル姿を中盤まで私たちは傍観するしかない。

そして一番心が通い合ってた年配の客ジョルジュの死によって、売春の事実が明るみにでると、やはり混乱している私たちと同様にイザベルの周りの大人たちもその理由を知りたがり、まるでモンスターを見るようにイザベルと距離をおくようになる。

処女喪失後、なぜ突然娼婦になったのか答えはきっとイザベルにもはっきりと分からないのだろう。
バカンスでどうでもいい顔だけの男と一夜を共にしたことで彼女は真実の愛を知る前に「性の感覚」を覚えてしまった、ただそれだけのこと。
早く性を知りすぎてしまった少女は時々自らの性の使い方を間違えてしまうからもう後戻りはできない。

強制的に心理カウンセラーに通うことになったイザベルがカウンセラー代を聞いて「たったそれだけ?」というシーン。
そして、年配のカウンセラーにでさえ女である自分をみせようとする振る舞い。
「一度売春した女は、一生娼婦として生きる。」という客の言葉を思い出した。

危うい不完全な魂がもたらした罪を背負いながら彼女は歳を重ねてこれからどこに向かうのか?

このモヤモヤを払拭するようにラストに登場するシャーロット ランプリングの圧倒的な存在感が素晴らしい。
イザベルの若さに心から感服した老女の哀愁と、彼女の過ちすら肯定できる年齢を重ねたからこその深みとはもう、一瞬だけの17歳という若さの美とはまた違う次元で美しかった。
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