MasaichiYaguchi

大人ドロップのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

大人ドロップ(2013年製作の映画)
3.5
終盤の方で主人公たちが「あの頃は痛かったよね」と言い合うシーンがあるが、この作品程にはドラマチックではないにしろ、当時を振り返るとほろ苦く、穴があったら入りたいような「痛い思い出」が蘇ってくる。
樋口直哉さんの同名小説を原作にして、脚本・監督・編集を担当した「荒川アンダーザブリッジ」の飯塚健さんが映画用にアレンジした作品。
この作品では主人公の高校3年生の浅井由と彼のクラスメイトたち、入江杏と彼女の親友ハル、そして主人公の親友ハジメという4人が登場し、ひと夏の体験を通して子供から大人へ脱皮しようともがく様を青春の煌きや痛みと共に描いていく。
夏休み前、浅井由は親友のハジメから彼が思いを寄せている入江杏とのデートのセッティングを懇願される。
由は杏の親友ハルの力を借りて何とかデートの約束を取り付けるが、ハジメが立てた「デート作戦」が裏目に出て杏を怒らせてしまう。
由は杏に謝罪して仲直りしたいと思うのだが…
高校時代の気の置けない友人との交流、恋しい人への切ない思い、早く大人になろうと背伸びしたい心境、なかなか思うようにならない現実等、誰でもが一度は経験するようなエピソードが登場して共感する。
由が杏に思いを伝える前に家庭の事情で杏は学校を辞め、遠い所へ引越してしまう。
モヤモヤとした気持ちで居ても立っても居られない由とハジメは杏の居所を突き止め、彼女を訪ねるべく旅に出る。
果たして由は杏に思いを伝えることが出来るのか?
杏のように家庭の事情で早く大人にならなければならない子を除いて、由の様な普通の家庭の思春期の子は子供と大人の狭間で惑い続けると思う。
由は杏と向き合うことで自分の足元を見詰め直していく。
主要キャスト4人の個性はバラバラだが、池松壮亮さん、橋本愛さん、小林涼子さん、前野朋哉さんの個性がぶつかり合って心に響く青春のジレンマを奏でていたと思う。