Stylo

そこのみにて光輝くのStyloのネタバレレビュー・内容・結末

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

脳障害の父を抱え、貧困から抜け出すことの難しい、千夏の家庭環境に衝撃を受ける。
執行猶予中の弟が、連れてきたカズオによって、少しずつ明るい世界が、空がひらけていく。しかし、弟の仕事の世話をしてくれる腐れ縁の男から逃れることは難しく、見ていても「いい加減にして」と言いたくなる。
周囲の環境のせいで、性的に搾取される日常からは、女性としての誇りも失わせるように思える。それでも、千夏役の池脇千鶴の生命力溢れる存在感は、痛めつけられても立ち上がる女の強さを体現している。

また、カズオ役の綾野剛が持つ、ナイーブさと芯の強さの共存した眼差しは魅力的だ。物語の要である、弟役の菅田将暉は、やり場のない無力感と悲しさを隠した難役を演じ切っている。3人の情熱が相まって、愛情、憎しみ、苦痛という身近な人の感情が画面から漏れ出てくるように感じた。

映画全体を通して、函館の海と山に囲まれた環境や、夏の日差しがストーリーの情景を映し出している。淡い光に包まれた海でのキスシーンは、恋と愛の狭間の引力を見せている。

愛することで強くなる、少しずつでもやり直せるもいう、得難い希望を見せてくれる作品。
Stylo

Stylo