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そこのみにて光輝くの821のレビュー・感想・評価

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
4.0
自責の念から酒に溺れ、自暴自棄になった男と、やぶれかぶれになった家族のために身を売って金銭を稼ぐ女が、傷を舐め合い救いを見出してく話。こうまとめると、よくある映画のプロットっぽくってなんだかどこかで見たことある感じはするんですけど。でも本作がまた一線を画しているように見えたのは、丁寧に描かれた登場人物の人間性と、強烈に印象づけられた光と影の対比があったからかもしれないです。

達夫は陽の光がうっすら射し込む部屋で、光から逃げるように隅っこで丸まって寝る。千夏と拓児の家で、千夏が「闇」に向かい合う部屋は光が射さず薄暗い。中島が現れるシーンはいつも明るい。それでも、度々訪れる身体を重ねるシーンは一方的で残酷。
他方で、達夫と千夏が愛を育むシーンではゆっくりと時間をかけてその様が描写されている。
(最初、濡れ場が長くないか?って思ったけど、後からの対比を見ると必要な時間だったなと感じます。)
この対比がすごく印象的でした。

ラスト、再び突き落とされたどん底の中でも、朝陽が射し、千夏を照らす。その時の千夏の姿はハッとするくらい、美しくて。そんな輝く千夏の事をしっかりと見届ける、愛しんでくれる人が存在するようになった。達夫にも、共に生きたいと思える存在ができた。一朝一夕でどうにかなる状況じゃないけど、2人で前を向いて、一歩ずつ進んで欲しい。そう思う映画でした。


ところで、達夫が「家族を持ちたくなった」と伝えるシーン。それまでの酒に溺れた姿と全く顔つきが変わっていて、後から追加で撮り直したんか?とびっくりするレベルだった。綾野剛のインタビュー記事を読んでると、敢えてこれまでと違った「酒を抜いた」顔で撮影に臨んでいたということで。凄まじいプロ意識。
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