明石です

恐怖のまわり道の明石ですのレビュー・感想・評価

恐怖のまわり道(1945年製作の映画)
4.1
場末の酒場でピアニストをしていた男が、歌手を目指しハリウッドに行った恋人を訪ねるべく、ヒッチハイクでアメリカを横断、数奇な運命に巻き込まれてしまうお話。B級映画職人エドガー・G・ウルマーの手掛けた低予算ながら脚本の素晴らしさが際立つノワール作品。

序盤はなんだかニューヨーク・ニューヨークやララランドみたいな甘酸っぱいロマンス路線の話かと思いきや、、段々とアクセルを踏むように気味の悪い話になっていく。何が怖いって、主人公の妄想と回想の線引きが曖昧なこと。恋人と電話してるのかと思いき、相手の言葉が入り込む余地のないほど早口で事務的なので、実は独り言なのではと思わせる見せ方とかが特に。

肝であるシナリオの秀逸さは言わずもがな、台詞がとても良く、会話だけでも聴いていれるのは名作たる所以かもですね。主人公の皮肉っぽい人柄が出てる言葉も、それ以上にシニカルで嫌味な女性との掛け合いもどれも好き笑。「その演奏ならカーネギーホールにも行けるわ」「ああ、掃除夫としてな」とか、「人生は野球と同じ。どんな球でもバットを振らなきゃ、あっという間に9回よ」「どこかで読んだのか?」とか笑。

——好きな台詞
「俺は健康的な男で、彼女も健康的な女だった。2つを足せば健康的なロマンスが生まれる。よくある話さ。だけどそれが世界で1番素晴らしいことだ」
明石です

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