フラハティ

アバウト・タイム 愛おしい時間についてのフラハティのレビュー・感想・評価

4.0
僕とあなたの大切な時間。


誰もが人生で直面する問題。
あのとき、ああすればよかった。
本作の主人公は無双。
いくらでも過去に戻ることができる。


本作の良さは、恋愛だけのテーマを取り扱うだけで終わりでなかったこと。
そもそも人生における"愛おしい時間"というのは家族といたって、友だちといたって、恋人といたって、一人でいたって、どの瞬間でも同じなんだ。
"ただいる時間"を"愛おしい時間"に変えることができるのは、自分だけ。

正直、主人公であるティムって自分勝手に映るよね。ってか子どもっぽいってほうが合ってるかな。
ヒロインにいい格好をしようと、時間を巻き戻す。相手のことなど気にせず。
確かに他人の人生を蔑ろにしてるって感じるけど、ティムのおかげでその相手もまた別の幸せを手に入れたのかもしれない。逆もありえるんだけどね。

最後にティムは当たり前のことに気づく。
今日という日がどれほど素晴らしい一日だったのかを。
時間を使うとき、はじめは自分のためにしか使えない。
でもいつしか誰かのために時間を使えるようになる。
ティムがそうやって成長している姿を、作品を通してテーマの一部としても取り入れているのもいいよね。
この締め方は素直に上手かった。


過去に繰り返し戻ることで、いつしか一日という"愛おしい時間"を忘れてしまう。
選択を間違えずに失敗しないことが目的となり、自分の人生ばかりに焦点を置いてしまう。

みなが平等に与えられている24時間という一日。
あの人は笑い、あの人は泣き、あの人は命を落とす。
この世の誰かがそうやって毎日を過ごしている。
間違いだらけの人生だっていいはず。
選択肢に悩み、選んだ道が間違ってる可能性だってある。
でも、そこから生まれる新しい選択肢をまた選べばいいんだ。
君が君らしくいられる。
今この瞬間だけじゃまだ人生は決まらない。
変えられるのは自分だけだろ。


ただいたずらに過ぎていく日々の中で、全てが成り行きで決まっていくとか、なにも変わらないとか、人生ってどうしようもないんだって思うこともある。
でもそれはただ、自分が受け身の人生を過ごしてしまってるってことなのかもしれない。

明日は絶対に来る。
だから今日は適当に過ごそう。
こう思っちゃうこともあるよね。
あと少し頑張れば。
あと少し立ち止まってみれば。
あと少し勇気を出せば。
毎日が変わる。
世界が変わる。


本作は綺麗事かもしれない。
一種のファンタジーかもしれない。
でもやっぱり、人生は誰にでも与えられていて、身分とか人種とかそんなどうでもいいものを越えて人と人って繋がってるんだよ。
時間は何にも変えられない。
でも自分という存在も何にも変えられない。
あの人を励ませられるのはあなただけかもしれない。
あの人を笑顔にできるのはあなただけかもしれない。
あなただけにしかできないことがあるかもしれない。
それだけ自分っていうのは可能性に満ち溢れてる。
自分を信じてやろう。
そして応援してやろう。
毎日を彩るのは他でもない自分自身なんだから。


本作はタイムリープ系でも設定は緩めで、そこで冷めるというのもわかるけれど、この能力は個人のものであるということと、冒頭の会話で「バタフライ効果とかはよくわからんが。」と父親が言っている時点で、監督がわざとガチな設定じゃないんだと線引きさせているのが分かって、この部分も好印象だね。
だって、この映画で大切なのってそこじゃないじゃんって監督絶対言ってそう。笑

甘ったるいし、粗があるって作品だけど、観終わったあと素直に幸せな気持ちになれる。
この映画は全てにおいて寛容で、観客を温かく包んでくれる。
僕らだって、未来からもう一度過去を旅してるかもしれないだろ。
人生をやり直すのはいつでもなく、今現在なんだ。
タイムトラベルなんかしなくたって、人生は素晴らしいんだから。
フラハティ

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