どかんとナイス

アバウト・タイム 愛おしい時間についてのどかんとナイスのレビュー・感想・評価

4.5
Filmarksで私の稚拙なレビューに「いいね」を付けていただいた皆様のおかげで、この素晴らしい映画に出会うことができました。
と言いますのも、皆様の「いいね」を辿らせていただきまして、この映画を推す方が多く見受けられたので、鑑賞する気になった次第です。
この映画のジャケ写やあらすじを見ただけでは、私のような粗忽な節穴中年の琴線には触れず、未鑑賞で人生を終えたかもしれません。皆様に感謝いたしております。

ジーンとくる映画でした。後半、カタルシスに共感し、感情が激して流すような涙ではなく、気が付いたらはらはらと落涙していて、今までに無い経験でした。「なんなのだろう、これは?」と思いました。これまでの人生で、自分の涙を流すときのデータや感覚に無いものでした。

誰もが一度は夢見るタイムトラベル。「たら、れば」は人生につきものです。この映画の主人公は、一家に代々伝わる特殊な能力であるタイムトラベルを駆使して、最高で最善の人生を選択し歩んでいきます。但し、そこで優先されるのは、「自己への利」ではなく、必ず「他者への利」なのです。まず、これを描いていることが素晴らしいことだと思います。
また、描かれる主人公の人生は、ドラマティックだったり、悲劇的なものではありません。(ちょっと妹が可哀想ですが)比較的平凡ながらも幸せな人生を送ります。やがて主人公は、タイムトラベルを繰り返すうちに人間的に成長し、悟るのです。
平和で起伏のない毎日でも、生きることの幸せを日々、噛みしめていこうと。そして出来うる限り大事に、精一杯生きていくことが大切なのだ、と。生命賛歌です。

果たして自分はどうかと鑑みるにつけ、日々を無為に過ごしていることに気付きます。ただ、働いて酒を飲んで、飯を食べて寝て、また仕事に行く毎日です。「俺、ショッパイ人生送ってるなー。」と思います。
この映画を観て流した涙の要因は、そうした無念さや自身への歯痒さを実感したこと。はたまた主人公への嫉妬など含めた私的でネガティブな感情の発露。そこに前述した生命賛歌に対するポジティブな感動が混ぜ合わさった結果なのではないかと、自己分析してみました。複雑です。

つまり本作は、自分を見つめ直すことが出来る映画なのだと、私は解釈しております。多くの人に愛される映画なわけです。下手したら観た人の人生に影響を与えてしまうかもしれません。しかし、それこそが映画を観ることの醍醐味ではありませんか。

この映画を沢山の人たちに観てもらいたいなと、Filmarksの先輩であり、自己への利より他者への利を重んずる素敵でナイスな皆様と一緒に願わせていただく所存でございます。