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ローン・サバイバーのbutasuのレビュー・感想・評価

ローン・サバイバー(2013年製作の映画)
2.0
どうにも違和感を感じるシーンが多かった。実話なので文句をつけるのもおかしな話なのだが。

あんな敵陣営のど真ん中にたった数人の部隊で潜入するのがそもそも無理ゲー。そりゃ隠密が上手くいけば問題ないのかも知れないが、見つかった途端全滅確定ではないか。民間人を逃がすシーンを入れて「米国の優しさ」演出を忘れないのも鼻につく。敵もめちゃめちゃ死んでいるのに、こちらの大尉が死ぬときはスローモーション演出。冒頭の大尉とのやり取りも全く上手く機能していない。というか割と緊迫した場面でそのくだらない話を始めるから、緊張感を削ぐ上に死亡フラグ丸出しで下手だとすら思う。追い詰められてパニックになった感じを出したいのだと思うが、マーク・ウォルバーグの演技はどうにもうるさい。特に終盤に進むにつれて粗暴でガサツになっていくので、あまり観ていて気持ちが良いものではない。

そもそも冒頭で主人公がひとり助かっているシーンを見せられてタイトルがこれなので、部隊の他のメンバーが全員死ぬのはわかっているところから始まる映画。にも関わらず、主人公が一人になるのは映画の割と後半の方。それまで仲間たちのピンチや死亡フラグをダラダラと見せられても、死ぬことがわかりきっているので本当に緊迫感がない。民間人を殺すかどうか揉めているシーンが一番緊迫感のあるシーンってどういうことだ。ただあのシーンも「普通に連行していけばいいのに」としか思えなかったが。

戦闘シーンも異様に長い割には、一番派手なのは急斜面を転がり落ちるシーンの方。確かにこのシーンの迫力は物凄い。ただ味を占めたのか知らないが、その後もう一回似たようなシーンを見せられるが。あと冒頭と最後で出される「死にかけの主人公が心臓マッサージをされているシーン」は本当に必要がない。あの場所から救出された時点で映画としてはフィニッシュなわけで、その後のシーンはただの蛇足。冒頭の軍の厳しさや若者いじりなどのシーンも軒並み不要。

あとポスターでも本編でも3日間ということが強調されているが、時間経過がわかりにくくあまり実感がなかった。何というか、一人だけ生き残ってからもっと凄まじいドラマがあったのかと期待してしまったんだよなぁ。現地の親切な村人に助けられる→軍の助けが来る→おしまい、だとは思わなかった。現地人の会話に字幕が入るところとそうでないところがあるのもモヤモヤした。あんな中途半端なことをするくらいなら字幕無しでも伝わるように作れや。

ピンチの主人公に現地の子供がナイフを渡したり、別れ際にその子供と抱き合うシーンなどの一連もあざとくて嫌い。その助けてくれた村人たちは放置して米軍はとっとと引き上げるんだぜ?絶対アメリカ人をかばったせいであの村がタリバンにまた襲われることは確定しているのに。なんなら米軍の攻撃のせいで、その復讐があの村に向く可能性すらあるのに。そこから完全に目を逸らしてこれを美談として処理している時点で、やっぱりアメリカ人は自分勝手だな、という感想にしかならなかった。
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