木村建太

ファインディング・ドリーの木村建太のレビュー・感想・評価

ファインディング・ドリー(2016年製作の映画)
4.0
最後の「移人称」に涙…。
「ほんとに大変だったんだね、でも、よかったね」という気持ち。
海の生き物のディティールも細かくて最高。イカの「あの部分」をあんなに恐ろしく描いたのはもしかしたらはじめてでは?
でも、吐き気がするほどかわいそうな扱いのキャラもなん人かいて、ドリーの迷子と相まって途中地獄かと思った。地獄は悪い。でもそれもズートピアとは別のレベルで(「報われなかったり扱いが雑なキャラを物語上に存在させるという態度を選択した」ということ自体が)「リアル」なのかもしれないともおもった。

伏線は単純なものが多くて(望むストーリーラインに沿ってドリーの過去を決定し、あとは思い出すきっかけになる「なにか」をむりやりにでも話上にねじこめばいい)それ自体は別にそこまですごいものだとは思えなかったけど、色んな形状をした、色んな心的、身体的な欠損やハンデをかかえた生き物たちが大量に登場するので、現実に呼応させた場合の反響の数がとてつもなく多く、それを考えながらみるのならばけっこう疲れる作品かもしれない。現実世界の問題、というか人間の問題に還元できないような作品は無意味だと思っているので、魚たちが「本当に」つらいかどうかには興味がないのだけど、暗喩同士、暗喩を託されたキャラ同士が、実際の現実とは実はあまり関係ない切り離された世界で、反響し合って、その反響の具合それ自体が切実な問題を鑑賞者の脳内に浮かび上がらせる。(鳥のベッキーに対して、ある音声を発することで援助を要請することができるが、具体的にその音声がなにを意味するのかはわからない、など)


5回くらいみるともっと色々わかるかも。すごい楽しかったな
木村建太

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