人は生まれた時はみんな天使だ。
けれども感情が芽生え、成長するにしたがって、天使にも悪魔にもなれる。
日本のコミックでも歴史に残る問題作であり、傑作を長いときを経て実写化。
ハリウッドが権利を持っていたのが期限切れになり、国内での映画化となったわけですが、やはり予算やら何やらのことから一抹の不安があったのは確か。
けれど、蓋を開けてみると、想像した以上にかなり良い出来で、そんな不安も吹き飛びました。
勿論、尺におさめるために原作をかなりアレンジ、改案しているので、原作ファンを中心に賛否両論ではあるでしょう。
個人的にも、やはりミギーが最初っから、かなり「人間的」なところは気になりました。
基本的にミギーは、本能でしか動かないし、考えない「冷徹」な寄生生物なのですが、阿部サダヲ演じるミギーは、なんだか主人公の泉新一の友達のような感じで、違和感があります。
でも、思ったよりかは阿部サダヲのミギーも悪くはないな、と思えました。
こういったミギーも面白いと思えたんですね。
新一とミギーという、種をこえて共存しなければならない者同士の、一種のバディ物だとして観れば、これはこれでアリなのかもしれません。
原作が語っているものの一つに、「種の共存」があるので、そういった観点からすると、尺の決まっている映画にするには、ミギーが少しぐらい「人間くささ」を持っていたほうが有利であろうし、なにより早い時点で新一が逆に人間性を失ってゆくので、対比を鮮やかにするためにも良い判断と言えるのではないでしょうか。
細かな設定が違っていたり、キャラクターが削られていたり、印象的な台詞がいくつか出てこなかったり、色々と原作と違う点も目に付くのですが、全体的な印象は変わっていないし、アレンジは概ね成功しているかと思いました。
特に、新一の父親を削り、母子家庭とすることで、母子の絆をより強調できています。
(このあたりの染谷将太の演技はかない良いですね。引き込まれるものがありました)
母親を乗っ取った「A」との戦いも、原作で共闘する宇田を出さないかわりの決着の付け方がとても巧く、ここだけは最早、原作を超えていると言っても過言ではないでしょう。
田宮良子の「実験」としては、かなり興味深い結果になったのではないでしょうか?
「母親の持つ特殊な能力」、つまりは母性なのですが、これも「寄生獣」という物語にとって重要な要素ですので、死んでもなお息子を案じる母の強力な母性には感動を覚えさせられたし、原作よりも良かったと思えました。
「寄生獣」といえばホラー・ヴァイオレンス描写も外せませんが、低いレーティングの割に「こんなに見せちゃって大丈夫なのか?」と余計な心配していまうぐらいの過激な人体破壊描写が多いのも観る前は、「どうせビジュアル的なホラー要素はおさえてあるんだろう」とタカをくくっていたので、正直驚かせられました。
あくまで人間でない者が人肉食いをしているわけなのでOKなんでしょうけれど、けっこう中学生とかには目の毒かもしれません。
CG主体なので寄生生物の変形や人体切断などに生々しさが無いのが個人的には微妙なところなのですが、これぐらいにしておかないとヤバイでしょうね、間違いなく。
山崎貴監督にしては抑揚が効いた出来だし、橋本愛も素晴らしくキュートだし、結婚したばかりの東出昌大も無感情の寄生生物役にとてもマッチしています。
「寄生獣」の骨子は、まさしく「デビルマン」と同様なのですが、あちらの実写映画は惨憺たる結果に終わってしまったので、「寄生獣」には期待しています。
後編の完成度が更に高くなっていることを期待させてくれる前編でした。
新一の半端なさすぎる順応の早さなど、気になる点もありましたが、後編への期待値も込めての点数です。
劇場にて